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短くて心に残る詩

2016/02/28

ひとりずつがべつにつくられ

ー室生犀星ー

おとことおんなのくべつの

何のかげんであんなのが生れたのだろう、

ひとりずつがべつべつにつくられ

べつの言葉とからだをもちながら

わずかな年月を隔(お)いてそして

また愉(たの)しく一しょになる、

誰のいたずらでもなく

命をかけてそれを守るということも

そのわかれめが美しいからだ、

そのわかれめを一生を通じて覗(のぞ)いて来たね、

べつべつにうまれたから会えたのだ。

 

(「女ごのための最後の詩集」より

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/26

山も河も

ー室生犀星ー

ここにあるもの山も河も老い

人も老い

木々も老い

ひさかたのわれも老い

誰も彼も死にはてたるはなし

死にかかわらぬ話とてはなし

山も河も

人もみなよろけ老いけり

 

(「いにしえ」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/25

或るひとの時間

ー室生犀星ー

昨夜行ってね

けさって来てね

また夕方から行くのよ、

では 一たい あなたはそのようにして

誰に逢いにゆくの、

いつも 苦しそうに

うなっているひとなのよ、

いいところじゃないわ、

けれどもその人はもう死ぬのよ、

 

(「女ごのための最後の詩集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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手 紙

ー室生犀星ー

僕は手紙をかいて出した、

風ほこりで向う岸が見えない、

草は枯れ灰色の煙突が見えている

遠くの込んだ町に

白い手紙の行先が見える、

宛名も所も

そこにゐる人も知って出したのだ、

だが いまだに返事がない、

たくさんの友の死のあいだに

僕は窮屈にはさまれ

首だけ出して、

その遠い返事をまだ待っている。

 
(「女ごのための最後の詩集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/24

ー室生犀星ー

魚をあぶり

菜(な)をきざみてもてなせる人ら

おのが疲れを知らず

酬(むく)いられるべきことを知らず

ただ あがれあがれとは云えり

ものを食うべ

ひとのなさけの深きをしる

早春

故山(こざん)きびしき中にいてしる

 

(「いにしえ」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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税 関

ー室生犀星ー

税関の建物の前で、

船から下りたばかりの夫人がいう、

ここはジャパンよ

ここからがジャパンになるのよ。

小さいお嬢さんが煤(すす)に吹かれていう、

そう此処(ここ)がジャパンなの、

ジャパンは暗いわね。

 

(「鉄集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/23

急行列車

ー室生犀星ー

汽車は急行なり

首も千断(ちぎ)るるの急行なり。

森は走り

家は走り

午後の光は走り

山は平らたくなり

河は鳴り

海は鳴り

海気みなぎり

月出づ。

世界は湧きかえり

世界は戦いのさなかなり。

林と林ともつれ逢い

青田の上に娘は流る。

電線は流れ

われはきちがいになり、

村村の灯はちらちら流れ

星はながれ

われは田舎へ流る、

こいしくなり

はるばるおんまえさまを求め。

 

(「鳥雀集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/20

冬の婦人

ー室生犀星ー

電車のなかなどで

あかぎれの切れた婦人の手見ると

私はすぐに目をそらしてしまう

ざらざらした寒さが襲ってくるのだ

きざんだような暗さが荒く荒くよせてくるのだ

婦人たちのあらい水仕事は

きっと手をあれさせるに決っている

ひとつはやはり生活と戦っているからだ

直接に生活の心にふれているからだ

そうわかりながら痛々しく私は目をそらしてしまうのだ

 

なかには吹きさらしの寒風に

もう手のかたちさえなくなって

冷たくぬれた蝦(えび)のように

やっと節と節とがつながっているのさえある

それを見つめているとふしぎに私の心まで冷たくなってくる

気の毒だとおもい

よく働いているとおもいながら

つぎの瞬間私は冷たい目つきをしてそれを見まいとするのだ

そこには幸福も凍えあがっている

暖かさがみな蒸発してしまっている

あるものは惨(むご)たらしいしゃこのような

むずむずと冷たい歩みをつづける田舎のさかな屋の

石たたみに這(は)う

あかちゃけた心臓のないようなしゃこだ

 

ある日客があって

婦人は手を見れば美しくあるかないかが解ると言っていた

自分は決して手のきたない婦人をもらうまいと言った

そこへ家内が茶をもって出て来た

私はひいやりとしてその手を見た

あかぎれは切れていないが

しかしやはり紅くなっている

私はいく疋(ひき)となく連れをこさえた蚕(かいこ)のような指を

どこかで見て来たことをおもい

目をふせて火鉢の灰をながめて

すこし沈んだ気になった

 

暗さはたてからもよこからもくる

冬をおしとめることができないように

よごれる手を拭ききよめられない

冷厳な冬のたましいの底にふれて

きざまれる婦人の手を決して避難はできない

けれども寒くなる

気を荒くしてくる

 

(「寂しき都会」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/19

誰かをさがすために

ー室生犀星ー

きょうもあなたは

何をさがしにとぼとぼ歩いているのです、

まだ逢ったこともない人なんですが

その人にもしかしたら

きょう逢えるかと尋ねて歩いているのです、

逢ったこともない人を

どうしてあなたは尋ね出せるのです、

顔だって見たことのない他人でしょう、

それがどうして見つかるとお思いなんです、

いや まだ逢ったことがないから

その人を是非尋ね出したいのです、

逢ったことのある人には

わたくしは逢いたくないのです、

あなたは変った方ですね、

はじめて逢うために人を捜しているのが

そんなに変に見えるのでしょうか、

人間はみなそんな捜し方をしているのではないか、

そして人間はきっと誰かを一人ずつ、

捜しあてているのではないか。

 

(「女ごのための最後の詩集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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2016/02/18

あやめ

ー室生犀星ー

あやめ あやめ

白いあやめ

鶴のくちばしのようで

開くとひと声たかく啼き立つ。

あやめ あやめ

白いあやめは

あかつきに開いて

誰にも開いたところを

見せたことがない。

誰も見たことがない

白いあやめ

あやめの花。

 

(「東京詩集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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