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ゴムマリの歌


ゴムマリか、なさけない
ゴムマリか、なさけない
ゴムマリは、キャラメル食べて
ゴムマリは、ギッタギダギダ

ゴムマリは、ころべどころべど
ゴムマリはゴムのマリなり
ゴムマリを待つは不運か
ゴムマリは、涙流すか

ゴムマリは、ころんでいって、
ゴムマリは、天寿に至る
ゴムマリは、天寿に至り
ゴムマリは天寿のマリよ
 
(Ⅰ 一九三二・一二・二七 Matin)

修羅街挽歌 其の二より抜粋

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薔 薇

 
開いて、いるのは、
あれは、花かよ?
何の、花かよ?
薔薇(ばら)の、花じゃろ。

しんなり、開いて、
こちらを、むいてる。
蜂だとて、いぬ、
小暗い、小庭に。

ああ、さば、薔薇(そうび)よ、
物を、云ってよ、
物をし、云えば、
答えよう、もの。

答えたらさて、
もっと、開(さ)こうか?
答えても、なお、
ジット、そのまま?

        一九三四、一二

▶音声ファイル(※クリックすると音が出ます)


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「ノート翻訳詩」について

 
 
 「ノート翻訳詩」は、中原中也が使っていた「ノート小年時」と同種のノートで、表表紙に詩人の筆跡で「翻訳詩」と書かれてあるため、このノートの名を角川版編者がそう呼びならわしたものです。
 
 このノートには、ランボーやネルバルらの翻訳詩14篇のほかに、未発表詩篇8篇と「孟夏谿行」と題された短歌4首、および断片が記されましたが、翻訳詩14篇は「翻訳」に分類され、断片は「評論・小説」に分類されます。したがって「ノート翻訳詩」に収録されるのは、未発表詩篇8篇と短歌4首だけです。いずれも昭和8年の制作と推定され、「ノート翻訳詩(1933年)」と表記されます。ややこしい話ですが、「ノート翻訳詩(1933年)」には翻訳詩は収録されないのです。
 
 

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(冨倉の尻を小さくし)

 
冨倉の尻を小さくし
冨倉より軽い下駄をはかせ
もっと色男にすると十一谷がホーフツする
それから、冨倉から所労なる言葉を吐く口付をやめさせるのだ
その意味で、倉のような苦労が十一谷にはない。
だから彼の小説も、冨倉が思う半分の苦労もいっていないのだけれどそれを冨倉御存知ない
大学生諸君に分らないさ、そんなことは
こんなことは言われて気付くだけさ
それは分ってることじゃない。
そんな所へも表現出来てないものはって言ってやったらみんな顔色はない

     *

自ら萎(しぼ)むことは
物体に対する観察眼を鈍らせるものだ、何時の間にやら彼は自分をせまくしてることを知らない。
おおおんみよ
人にうちのめされる人間は
或はもっと御身より幸福だ

     *

自ら間在的な性質に甘んじてる奴のやりざまは
威張って歩く奴よりは悪い
 

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戯 歌

 
降る雪は
 いつまで降るか
 

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(秋の日の吊瓶落としや悲しさや)

 
秋の日の吊瓶落としや悲しさや
戦い終わり、蒼然と
人々起てば、新聞紙
・・・・・・・・・
 

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手 紙

 
かぎりなく、わたしはさびしく、このごろは、暮しております。
年々のこと、このころになれば、さびしいのですが、
いいえ、もともと、さびしい女なのですが、
今年(こんねん)のさびしさは、また格別でございます。

お聞きあそばせ、わたくしことは、
・・・・・・・・・・・・・・・
 

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(霞とうごき、月影に、とおくゆすれて)

 
      3
 
霞とうごき、月影に、とおくゆすれて、
われらが愛はでごのみ、風にもつれて、
・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

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俳 句

 
恋しくば 訪ね来てみよ ほととぎす

        (一九三五・五・二四)

コンスタンのアドルフ読みぬ秋の暮

        (一九三六・一〇・一一)

えらそうな看手が女房のひがごころ。

鉛筆が一本あれば歳が明け。

        (一九三七・四・二九)
 

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(日記より)

 
いろいろととやこう云われ、夜はくだち、
夜の明け方に明星をみた

明星はかなしくかすみ暁風に
雲の彼方で吹かれ吹かれていた

その光うすれ風吹く夜明け方
天の御国に雲ははたたく

        (一九三四)

みの虫がかぜに吹かれておれりけり
  かくして秋は深まりけり

        (一九三六・一〇・一一)
 

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