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ー室生犀星ー
おれは鏡の中を歩いていた
おれは鏡を踏み破って歩いていた
おれは美女の瞳の中を歩いていた
おれは快活に歌いながら歩いていた
おれは気がつくと月の中を歩いていた
おれは燐(りん)の粉をくッつけて歩いていた
おれはそれほど月の底を歩いていた
月の底はどろどろだったり
鏡のように冴(さ)えていたりした
(「鉄集」より)
<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>