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急行列車

ー室生犀星ー

汽車は急行なり

首も千断(ちぎ)るるの急行なり。

森は走り

家は走り

午後の光は走り

山は平らたくなり

河は鳴り

海は鳴り

海気みなぎり

月出づ。

世界は湧きかえり

世界は戦いのさなかなり。

林と林ともつれ逢い

青田の上に娘は流る。

電線は流れ

われはきちがいになり、

村村の灯はちらちら流れ

星はながれ

われは田舎へ流る、

こいしくなり

はるばるおんまえさまを求め。

 

(「鳥雀集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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