カテゴリー

« 魚 | トップページ | 或るひとの時間 »

手 紙

ー室生犀星ー

僕は手紙をかいて出した、

風ほこりで向う岸が見えない、

草は枯れ灰色の煙突が見えている

遠くの込んだ町に

白い手紙の行先が見える、

宛名も所も

そこにゐる人も知って出したのだ、

だが いまだに返事がない、

たくさんの友の死のあいだに

僕は窮屈にはさまれ

首だけ出して、

その遠い返事をまだ待っている。

 
(「女ごのための最後の詩集」より)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

« 魚 | トップページ | 或るひとの時間 »

短くて心に残る詩」カテゴリの記事