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ー室生犀星ー
僕は手紙をかいて出した、
風ほこりで向う岸が見えない、
草は枯れ灰色の煙突が見えている
遠くの込んだ町に
白い手紙の行先が見える、
宛名も所も
そこにゐる人も知って出したのだ、
だが いまだに返事がない、
たくさんの友の死のあいだに
僕は窮屈にはさまれ
首だけ出して、
その遠い返事をまだ待っている。
<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>