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わがひとに与うる哀歌

ー伊東静雄ー

太陽は美しく輝き

あるいは 太陽の美しく輝くことを希(ねが)い

手をかたくくみあわせ

しずかに私たちは歩いて行った

かく誘うものの何であろうとも

私たちの内(うち)の

誘わるる清らかさを私は信ずる

無縁のひとはたとえ

鳥々は恒(つね)に変らず鳴き

草木の囁きは時をわかたずとするとも

いま私たちは聴く

私たちの意志の姿勢で

それらの無辺な広大の讃歌を

ああ わがひと

輝くこの日光の中に忍びこんでいる

音なき空虚を

歴然と見わくる目の発明の

何になろう

如かない 人気ない山に上(のぼ)り

切に希われた太陽をして

殆ど死した湖の一面に遍照さするのに

 

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