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ー伊東静雄ー
日光はいやに透明に
おれの行く田舎道のうえにふる
そして 自然がぐるりに
おれにてんで見覚えの無いのはなぜだろう
死んだ女(ひと)はあっちで
ずっとおれより賑やかなのだ
でないと おれの胸がこんなに
真鍮の龍のようなのはなぜだろう
其(そ)れで遊んだことのない
おれの玩具(おもちゃ)の単調な音がする
そして おれの冒険ののち
名前ない体験のなり止(や)まぬのはなぜだろう