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海 へ

ー高祖保ー

海へ、一日。

しこたま夏の陽を仕入れて、日の暮れがたに還(かえ)ってみると、わたしの生地の肌がこう呟くのだ。「なんとよくもこれだけ掏(す)りかえられたものだ」と。

 

夜、絲爪棚(へちまだな)のかげで一風呂浴びる。

すると、どうだ。現像液に涵(ひた)した乾板のように、わたしの生地の部分が、みるみる泛(うか)びあがってきた。

 

ブラウンと白とで出来あがった、だんだらの斑う。この半白の「肉体写真」のうえで、一日の太陽の歩みを、――仮借(かしゃく)なく灼きつける、その炎の歌を、まざまざと読みとることができる。

 

夜は夜で、この太陽の火傷(やけど)が、わたしをひと晩眠らせない。

 

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