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黄昏に FRAU R. KITA GEWIDMET

ー立原道造ー

すべては 徒労だった と

告げる光のなかで 私は また

おまえの名を 言わねばならない

たそがれに

 

信じられたものは 美しかった

だが傷ついた いくつかの

風景 それらは すでに

とおくに のこされるばかりだろう

 

私は 身を 木の幹に凭(もた)せている

おまえは だまって 背を向けている

夕陽のなかに 鳩が 飛んでいる

 

私らは 別れよう……別れることが

私らの めぐりあいであった あの日のように

いまも また雲が空の遠くを ながれている

 

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