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ー小川未明ー
花によう似た姿をば、
なんの花かと問われると
すぐには返答(へんと)に困るけど。
ただ微笑(ほほえ)みてものいわず、
うす青白(あおしろ)き夢の世に、
いまは幻と浮かぶかな。
花にいろいろあるけれど、
燃える紅い花でない。
冷たい白い花でない。
夏はまだ浅く、色淡(いろあわ)く、
紫陽花(あじさい)の咲くころに、
私は姉(ねえ)さん思い出す。