象とパラソル
ー室生犀星ー
象の耳はよたりよたりと、
消炭色(けしずみいろ)で、日があたり。
きみはその前で写真を撮った。
パラソルを手に携(も)ち、顔をかしげ、
にっと嫣笑(わら)って 気取って、
きみは象を背景にして撮影した。
きみは象が巨(おお)きいと言って驚いた。
きみのはだかほど大きいものがないのに。
絵本、ボロの古洋服、
古新聞の活字の間を、
象はのそりのそりと歩いていた。
生きている証拠には 見なさい、
うまのくそのようなくそが一盛りあつた。
象はくそは踏まずに避けて歩いていた。
うまいもんだ。
きみはまた象の前で写真を撮(と)った。




