カテゴリー

« お釈迦様 | トップページ | セーヌ川 »

明 日

ー与謝野晶子ー

明日(あす)よ、明日よ、

そなたはわたしの前にあって

まだ踏まぬ未来の

不可思議の路(みち)である。

どんなに苦しい日にも、わたしは

そなたに憬(こ)がれて励(はげ)み、

どんなに楽(たのし)い日にも、わたしは

そなたを望んで踊りあがる。

 

明日よ、明日よ、

死と飢(うえ)とに追われて歩くわたしは

たびたびそなたに失望する。

そなたがやがて平凡な今日(きょう)に変り、

灰色をした昨日(きのう)になってゆくのを

いつも、いつもわたしは恨んで居る。

そなたこそ人を釣る好(よ)い香(におい)の餌(えさ)だ、

光に似た煙だと咀(のろ)うことさえある。

 

けれど、わたしはそなたを頼んで、

祭の前夜の子供のように

「明日よ、明日よ」と歌う。

わたしの前には

まだまだ新しい無限の明日がある。

よしや、そなたが涙を、悔(くい)を、愛を、

名を、歓楽を、何(なに)を持って来ようとも
そなたこそ今日のわたしを引く力である。

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

みだれ髪 (新潮文庫)
みだれ髪 (新潮文庫)
posted with amazlet at 15.05.27
与謝野 晶子
新潮社
売り上げランキング: 11,056
与謝野晶子歌集 (岩波文庫)
与謝野 晶子
岩波書店
売り上げランキング: 56,506

« お釈迦様 | トップページ | セーヌ川 »

短くて心に残る詩」カテゴリの記事