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ー与謝野晶子ー
ほんにセーヌ川よ、いつ見ても
灰がかりたる浅みどり……
陰影(かげ)に隠れたうすものか、
泣いた夜明(よあけ)の黒髪か。
いいえ、セーヌ川は泣きませぬ。
橋から覗(のぞ)くわたしこそ
旅にやつれたわたしこそ……
あれ、じっと、紅玉(ルビー)の涙のにじむこと……
船にも岸にも灯(ひ)がともる。
セーヌ川よ、
やっばりそなたも泣いている、
女ごころのセーヌ川……
<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>