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初夏の夕

ー大野百合子ー

この頃の夕方は
なにからなにまで
蒼っぽいしめりを含んでいるように
しっとり落ちついて
默っていると
默っていることに苦しくなり
どこまでも歩いて行きたい気がする
 
子供達の晴れやかな聲(こえ)にまじって
やさしい女の物賈りの聲(こえ)など聞えて来る
美しい切花を乗せた車が
もう夜店へ出かけて行く
しかもその花の一つ一つは
蒼い露を含んで
車の上でホロホロしている

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