セレナード
ージェラール・ド・ネルヴァル(中原中也訳)ー
――ねえ! なんてやさしい歌が私を呼覚ますのでしょう?
――おまえの床の傍に私(わたし)はついていますよ、……
娘や! 何にも聞こえはしませんよ、……
お休み、そりゃおまえの妄想ですよ!
――私は外に聞えます、おっ母さん、
空の合唱隊が!……
――おまえまた熱が出ますよ。
――その歌が窓から
近づいて来るようなんです。
――お眠り、ねえおまえ病気ですよ、
誰かセレナードを……
男の方々はみんな寝ちまいました!
――男の人たち! それがなんだと仰るのです?
雲があたしを連れてくのです……
さよなら地球よ、さようなら!
お母さん、その不思議な音
その天使の音楽が
それがあたしを神様の方へ呼んでいます!
(「新編中原中也全集」より。現代仮名遣いに改めました。)
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