冬に死す
ー竹内浩三ー
蛾が
静かに障子の桟(さん)からおちたよ
死んだんだね
なにもしなかったぼくは
こうして
なにもせずに
死んでゆくよ
ひとりで
生殖もしなかったの
寒くってね
なんにもしたくなかったの
死んでゆくよ
ひとりで
なんにもしなかったから
ひとは すぐぼくのことを
忘れてしまうだろう
いいの ぼくは
死んでゆくよ
ひとりで
こごえた蛾みたいに
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