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アルテミス

ージェラール・ド・ネルヴァル(中原中也訳)ー

十三番が甦る……するとまたそれが一番だ、

してそれは何時も唯一つ、又は唯一つの機会だ。

されば汝は! 太初の女王か終末の女王?

王か? 汝唯一人のそれとも最後の、情人か?……

 

愛せよ揺籃より柩にまで汝(なれ)を愛せし者を愛せよ、

わが愛したる者のみ独り、今も猶我をば愛す。

それぞ死よ――はたは死人よ……やさしくるおし!

持ちたりしそが手の花はたち葵。

 

火に充ちし手のナポリの聖女、

心菫に泣ける薔薇、聖ギジルが花、

汝(な)は見しや天の砂漠に汝(なれ)が十字架?

 

白薔薇よ、落ちよ! 汝わが神々を涜す。

落ちよ、白き霊体、燃ゆる汝(な)が空より落ちよ、

――地極の聖女はわが目にはいと聖なれば!

 

(「新編中原中也全集」より。現代仮名遣いに改めました。)

 

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