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茨木のり子の「ですます調」その1・書物初体験の記憶−168

のり子の「うたの心に生きた人々」が単刊発行されたのは

1967年11月、「さ・え・ら書房」からでした。

 

それが「ちくま文庫」として発行されたのが

1994年9月。

 

「倚りかからず」(ちくま文庫)の「茨木のり子著作目録」では

1955年「対話」(不知火社)

1958年「見えない配達夫」(飯塚書店)

1965年「鎮魂歌」(思潮社)

――に続く4番目の著作と記されています。


1967年は茨木のり子41歳の年です。

 

 

現在も増刷を繰り返しているということで

人気は衰える気配もありません。

 

その理由は

彼女の作品を

詩であれ散文であれ

読んでみればすぐにわかろうというものです。

 

そのような経験を一つ

紹介しておきましょう。

 

 

茨木のり子が書いた現代詩への入門書は

1979年発行の「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)がありますが

これより10年以上も前に

明治以後の詩人4人(与謝野晶子、高村光太郎、山之口貘、金子光晴)に絞った案内書がこの本で

ようやく最近になってここにたどり着き

夢中になって読んでいます。

 

その中で、

あ、これはどこかで覚えのある経験だなあ

なんだったかなあと自問するものがあり

なかなかその経験が思い出せないでいたところ

ふいに「少年少女○○物語」ってこういうのじゃなかったかな、と

懐かしくもよみがえってくる古い感情がありました。

 

 

赤胴鈴之助やまぼろし探偵やビリー・バックなどの紙の漫画本や

月光仮面や鉄腕アトムなどのテレビ番組より以前の

もっと古くて、ぼんやりかすんでしまった記憶の層にある

書物の初体験――。

 

それは少年画報とかの冒険活劇漫画だったのでしょうか。

 

漫画ではない

文字半分、挿絵半分の少年少女世界文学全集みたいなものだったのでしょうか。

 

記憶は混淆(こんこう)していて

錯綜(さくそう)していて

風化もしていますから定かではないのですが

茨木のり子の「ですます調」は

かなり古いこれらの書物体験の口ぶりを思い出させてくれたのです。

 

 

少年少女や青年男女向けに

意識してわかりやすくやさしく書こうとするもの、

ワクワクドキドキさせ飽きさせないものが

今読んでいる茨木のり子の「うた心に生きた人々」にありますし

かつて初めて読んだ「詩のこころを読む」にはありました。

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