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幼な子チビコ

ー今野大力ー

チビコは今年三つになりました、

チビコのお父さんは肺病でねています、

チビコのお母さんは又稼ぎに行くと言っています、

稼がなければ喰べられないから

チビコはある晩ばあちゃんに抱かれてねながら

「メメが痛いメメが痛い」とパッチリ目あけたまま

泣いて泣いて眠りませんでした、

そして翌日、ゲッゲッと食べ物を吐き出しました、

メメは目ではなく腹のようでした、

「チビコお父っちゃんあるかい」

「ある」

「チビコのお母ちゃんバカだね」

「かあちゃんバカないバカない」

チビコは熱心に言いました、

チビコは親の手でだけ育ってはいないのです、

父ちゃんはもう一年も前から遠い施療病院の病床にねたきり

母ちゃんは稼ぎに出かけて留守、

チビコはばあちゃんのふところに入ってねるばかり

 

チビコは靴を買ってもらいました

母ちゃんが稼いで買ってくれたのです、

チビコはまだ淋しい事を知りません

チビコはひとりで遊んでいます、

 

父ちゃんは肺病、

母ちゃんは稼ぎ、

ひとりで遊んでるチビコは風邪を引きやすい子です
 

(底本「今野大力作品集」新日本出版社/青空文庫より。)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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