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群集の中に

ー萩原恭次郎ー

群衆の中に一人ぽつねん立っている

其は立ちん坊より淋しい心である

樹の実が 樹に在るような静謐さにて

満たせない心は群集の中に目をつむっている!

私のふところには

白紙一枚ないけれ共

飢餓から来る脅迫!

失業から来る白眼の冷嘲

そは口火つけられしダイナモの如きもの

しずかに燃えゆき

しずかに笑いは真の怒りに変わる!

ああ かすかにも遠く爆音をきく時に

われらの目はかっと見開かる!

(萩原恭次郎「死刑宣告」(日本図書センター)Wikisouceより。現代仮名遣いに改めました。)

<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>

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