装甲弾機
ー萩原恭次郎ー
近代的都市の飛躍雑踏中に
我は装甲の強大なる弾機を見る
気まぐれなる煙りを吐き乍ら
鈍重なる無愛嬌者
彼は軍隊式に声を発し
都会の嗜好す
甘美や色彩や繊細を知らず
強い黄色の煙りを吐きちらし
都会をよごし気をわるくし
驚き易い心臓を圧迫さす
彼は弾丸や群集の心に従わない
最も真赤き野蛮な心臓をもつ
意のまま飽くまで
資本化した雑踏の世界に耐え
混乱への強い強い出現!
おお 過敏なる女性美文明に
幅広い肩をゆるがす無愛強者
喜びも悲しみも現せない
醜い顔をして
されど彼が泣く如き
強き頑迷なる心臓の閃き!
彼が熱意!
彼が力量!
彼が破壊!
彼が創造!
彼がまことなる強力の運転!
文明への争闘!
ああ 見る 我は現在!
巨大なる装甲の弾機!
美しき近代都市の飛躍雑踏中に
(萩原恭次郎「死刑宣告」(日本図書センター)Wikisouceより。現代仮名遣いに改めました。)
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