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ー萩原恭次郎ー
疲れた虫が
もの倦い花弁の中を泳いでいる
接吻も飽いた
コーヒー一杯で午前は終った
天気の悪い日だ
肉体が死を思う
肉体のはなれゆく悲哀を
厭しつけるような重い憂欝の抱擁でつづけた
女は赤いキモノをつけて笑っていた
古びたくっしよんの上で
ピエローは死につつある
一日は終った
黄色い電灯が部屋へやって来た
(萩原恭次郎「死刑宣告」(日本図書センター)Wikisouceより。現代仮名遣いに改めました。)
<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>