ー萩原恭次郎ー
私の思想は髪毛や胃や腸である!
私は晩飯を食って女に小説をよんでやる!
女でも男でもない幽霊ゴーストが
脳膜にぼんやりとうつっている!
ぶらさがった上着のように青ざめて笑っている!
せむしのように部屋の中を泳いでいる!
女の臓腑や胎児まですっかりうつっている!
赤い人形はいくつも部屋に
糸につるされてさがっている!
彼の女は部屋中にポカンとした目を開けている!
大きな眼は何を見ているのか知れない!
不思議な世界がうつっているらしい!
時計のように寂しい夜が歩いて来る音が聞える!
(萩原恭次郎「死刑宣告」(日本図書センター)Wikisouceより。現代仮名遣いに改めました。)
<ぜひ読んでおきたい! 心に残る短い詩>
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