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都会の自然/「時こそ今は……」その2

花は香炉に打薫じ
――とエピグラフにあるのは
シャルル・ピエール・ボードレール(1821~1867年)の詩集「悪の華」にある1篇を
「薄暮の曲(くれがたのきょく)」として上田敏が訳出したものに
中也がアレンジを加えたものです。

「薄暮の曲」で相当する元の詩句(フレーズ)は

時こそ今は水枝さす、こぬれに花の顫ふころ、
花は薫じて追風に、不断の香の炉に似たり。
――とある
ルフランを含む冒頭の2行でしょう。

時こそ今は……
 
         時こそ今は花は香炉に打薫じ
                 ボードレール

時こそ今は花は香炉(こうろ)に打薫(うちくん)じ、
そこはかとないけはいです。
しおだる花や水の音や、
家路をいそぐ人々や。

いかに泰子(やすこ)、いまこそは
しずかに一緒に、おりましょう。
遠くの空を、飛ぶ鳥も
いたいけな情(なさ)け、みちてます。

いかに泰子、いまこそは
暮るる籬(まがき)や群青の
空もしずかに流るころ。

いかに泰子、いまこそは
おまえの髪毛なよぶころ
花は香炉に打薫じ、

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。「新かな」に変え、一部「ルビ」を加えました。編者。)

「薄暮の曲」は
堀口大学の訳では「夕べのしらべ」と平明でモダンになりますが
「はくぼ(薄暮)」=夕暮れ、黄昏(たそがれ)は
中也の詩に度々現われるモチーフの一つです。

「時こそ今は……」も

第1連
そこはかとないけはいです。
しおだる花や水の音や、
家路をいそぐ人々や。

第2連
遠くの空を、飛ぶ鳥も
いたいけな情(なさ)け、みちてます。

第3連
暮るる籬(まがき)や群青の
空もしずかに流るころ。

――と暮れなずむ風景を歌い
「薄暮の曲」やボードレールの原詩「Harmonie du Soir」を踏まえつつも
その夕暮れは中也特有の「都会の自然の情景」がにじみます。

これらの情景は
この詩を制作したころに住んでいた
昭和初期の東京・高井戸(現杉並)周辺の街並みに違いありません。

家路をいそぐ人々
暮るる籬(まがき)
――はいかにも中也の眼差しがとらえた景色ですが……。

「花」が秋の花ならば
百合か薔薇か。

第1連、
しおだる花や水の音や、
――には、
「薄暮の曲」で「水枝」と上田敏が訳した情景が映っていますから
百合や薔薇ではないのかもしれません。

「しおだる」は、
「潮垂る。濡れて雫が垂れる。」の意味の古語(もしくは中也の造語)らしく
上田敏訳の水辺のイメージを
中也は生かそうとしています。
こだわっている感じがあります。

玉川上水とか桜上水とか、
神田川とか……。
高田博厚のアトリエ近くには
武蔵野の雑木林の風景ばかりでなく
「水辺」のイメージもあったのでしょうか。

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