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ループする悲しみ/「汚れっちまった悲しみに……」その6

悲しみが汚れる――とはどんなことでしょうか?

それを具体的に示すものが
「狐の革裘」です。

「汚れっちまった悲しみに……」の第2連第2行に現われる
たとえば狐の革裘
――という1行です。

ほかの詩行に
どのように汚れたのかが明示されているのを
見つけることはできません。

汚れっちまった悲しみに……
 
汚れっちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる

汚れっちまった悲しみは
たとえば狐の革裘(かわごろも)
汚れっちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる

汚れっちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れっちまった悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢(ゆめ)む

汚れっちまった悲しみに
いたいたしくも怖気(おじけ)づき
汚れっちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。「新かな」に変え、一部「ルビ」を加えました。編者。)

「狐の革裘」は
「たとえば」という「例示」を表わす副詞に導かれ
現われます。

しかも
「のようである」という述語(被修飾句)が省略されています。

この省略が
断定の効果を生みます。

たとえば狐の革裘である
――の意味になるからです。

そして
例は「狐の革裘」以外に示されません。
ほかに幾つかあるはずの例を引くことができないのです。

「狐の革裘」は幾つかある例のうちの一つではなく
ほかのどんな例にも還元することができないものなのです。
それをシンボルと呼んで間違いはないでしょう。

「狐の革裘」は「汚れた悲しみ」のシンボルなのです。

「汚れた悲しみ」の正体が
ここに明示されています。

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