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鳥が飛ぶ虫が鳴く・中原中也の詩6「ノート小年時」ほか

中原中也の「未発表詩篇」に現われる鳥獣虫魚(動物)を
ピックアップしていきます。
 
「ノート1924」には
東京に出てきてから作った詩が幾つか記されています。
ダダが残りますが
明らかにダダを脱皮しつつある詩群です。
 
 
「浮浪歌」
アストラカンの肩掛(かたかけ)に
口角の出た叔父(おじ)につれられ
 
「無 題」
緋(ひ)のいろに心はなごみ
蠣殻(かきがら)の疲れ休まる
 
明らけき土の光に
浮揚する
   蜻蛉となりぬ
 
 
ダダが動物の登場で
ダダらしからぬものになって
「まともな詩」ができた感じがしませんか?
 
<草稿詩篇(1925年―1928年)>
 
「地極の天使」
 蜂の尾と、ラム酒とに、世界は分解されしなり。夢のうちなる遠近法、夏の夜風の小槌(こづち)の重量、それ等は既になし。
 
「無 題」
私は木の葉にとまった一匹の昆虫‥‥‥
それなのに私の心は悲しみで一杯だった。
 
「屠殺所」
屠殺所(とさつじょ)に、
死んでゆく牛はモーと啼(な)いた。
六月の野の土赫(あか)く、
地平に雲が浮いていた。
 
  道は躓(つまず)きそうにわるく、
  私はその頃胃を病(や)んでいた。
 
屠殺所に、
死んでゆく牛はモーと啼いた。
六月の野の土赫く、
地平に雲が浮いていた。
 
「夏の夜」
私の心はまず人間の生活のことについて燃えるのだが、
そして私自身の仕事については一生懸命練磨するのだが、
結局私は薔薇色の蜘蛛(くも)だ、夏の夕方は紫に息づいている。
 
「聖浄白眼」
曇った寒い日の葉繁みでございます。
眼瞼(まぶた)に蜘蛛がいとを張ります。
 
「冬の日」
外では雀が樋(とい)に音をさせて、
冷たい白い冬の日だった。
 
「秋の夜」
深い草叢(くさむら)に虫が鳴いて、
深い草叢を霧が包む。
 
 
20篇中の7篇に動物が登場していますが
これが多いといえるのか少ないのか。
なんともいえません。
 
「屠殺所」は全行を掲出しました。
こんな名作が早い時期に生まれているという例として。
 
<ノート小年時(1928年―1930年)>
 
「女 よ」
さて、そのこまやかさが何処(どこ)からくるともしらないおまえは、
欣(よろこ)び甘え、しばらくは、仔猫のようにも戯(じゃ)れるのだが、
 
「冷酷の歌」
夕は泣くのでございます、獣(けもの)のように。
獣のように嗜慾(しよく)のうごめくままにうごいて、
その末は泣くのでございます、肉の痛みをだけ感じながら。
 
「雪が降っている……」
捨てられた羊かなんぞのように
  とおくを、
雪が降っている、
  とおくを。
 
「夏と私」
真ッ白い嘆かいのうちに、
海を見たり。鴎(かもめ)を見たり。
 
 
「ノート小年時」はランボーの影響が漂うノートです。
ランボーの散文詩「少年時」を意識して
ノートのタイトルを「小年時」としたこともそうですが
中の「頌歌」はランボーの「感動(センサシオン)」のデフォルメといってもよさそうで
ほかにも影響を感じさせる詩がいくつかあります。
 
「頌歌」をここに引いておきます。
 
頌 歌
 
出で発(た)たん!夏の夜は
霧(きり)と野と星とに向って。
出で発たん、夏の夜は
一人して、身も世も軽く!
 
この自由、おお!この自由!
心なき世のいさかいと
多忙なる思想を放ち、
身に沁(し)みるみ空の中に
 
悲しみと喜びをもて、
つつましく、かつはゆたけく、
歌はなん古きしらべを
 
霧と野と星とに伴(つ)れて、
歌はなん、夏の夜は
一人して、古きおもいを!
    (一九二九・七・一三)
 
ついでにランボーの詩「Sensation(センサシオン)」も引いておきましょう。
 
感動
中原中也訳
 
私はゆかう、夏の青き宵は
麦穂臑(すね)刺す小径の上に、小草(をぐさ)を踏みに
夢想家・私は私の足に、爽々(すがすが)しさのつたふを覚え、
吹く風に思ふさま、私の頭をなぶらすだらう!
 
私は語りも、考へもしまい、だが
果てなき愛は心の裡(うち)に、浮びも来よう
私は往かう、遠く遠くボヘミヤンのやう
天地の間を、女と伴れだつやうに幸福に。
 
(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは( )の中に入れ、一部、新漢字を使用しました。編者。
 
 
「山羊の歌」や「在りし日の歌」などに収録された詩の
原詩(第1次形態)が「ノート小年時」には多々あります。
その間(はざま)にも名作がひっそり咲いているかのようなラインナップです。
「朝の歌」以後の詩ですから当然のことですが。
 
ぜひ、読んでみてください。
 
 
以上を動物だけを列記しておきます。
 
アストラカン
蠣殻(かきがら)
蜻蛉
昆虫‥‥‥
蜘蛛(くも)
蜘蛛
仔猫
獣(けもの)
鴎(かもめ)
 
 
 
 

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