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「一筆啓上、安原喜弘様」昭和6年10月16日

詩人が詩人になるには
自ら詩人とただ名乗ればよいという単純なものでもなく
やはり目に見える形として詩集をもっていることを
世の中に向かってアピールしないことにははじまらないもののようです。
 
中原中也が初めて詩集を出そうと構想したのは
「富永太郎詩集」(私家版、昭和2年)が出たときということになっています。
このときは原稿を清書したまでで終わりました。
これが「山羊の歌」以前に計画された第1詩集でした。
幻の第1詩集です。
 
この辺の経緯について「新編中原中也全集」(第1巻 解題篇)が
詳しい考証をおこなっています。
 
使用していた原稿用紙の種類を分析するなどの方法で
仮説を立て結論していますが
得られた結論も仮説のようなもので
断定的なものではありません。
 
その結論(仮説)の部分を引用しておきます。
 
 
「山羊の歌」の最終章「羊の歌」に収められた3篇(「羊の歌」「憔悴」「いのちの声」)は、それまでの第1―4章の詩篇とは文体が異なり、初期の制作時期も「山羊の歌」の中で最も編集時期に近接している。このうち「羊の歌」の初稿は昭和6年3―4月に制作された可能性があり、これ以降、詩集出版の希望が芽生えたとも考えられる。大岡昇平は「詩集を出そうという考えは昭和6年頃からあったと見做される」と述べている(「解説」旧全集第1巻)。しかし、出版の希望はあったとしても、最終章の3篇がそろって後、初めて中原に詩集の全体構成プランが成立したのであろう。「山羊の歌」のしめくくりとなる詩篇「いのちの声」が制作された昭和7年2月以降、詩集の構想は高まり、編集・出版を決断したものと思われる。(※洋数字に変換しました。編者。)
 
 
「いのちの声」の制作をエポックに
「山羊の歌」は具体的な編集作業に入ったという考えです。
 
この考えが
昭和6年には「山羊の歌」の構想がなかったことを主張するものではありません。
詩人の頭の中に
詩篇の配置に関する小さなアイデアや章分けのプランなどが次第次第に形作られて
その後に、「いのちの声」が制作されたという構想段階があってもおかしくはありませんし
それがないほうが不自然です。
 
 
繰り返すようですが、
中原中也が、下宿でおとなしく「ヒヤ酒」を飲んでいた昭和6年のある時期は
編集が着手されようとする「前夜」にあたり
ヒヤ酒を飲む詩人の胸には
詩集の構想が渦巻いていたのかもしれません。
 
 
昭和6年の手紙をざっと読んできましたが
ここで「72 10月16日 安原喜弘宛 封書」の全文を読んでおきましょう。
 
この中に「作品」に関する記述があります。
なにがしか、自らの詩作品への「思い」が述べられており
それは詩集への意志と無縁ではないように感じられますがいかがでしょうか……。
 
 
 元気もなんにもありません。自分ながら情けない気持ちで生きています。
 新宿の空に、気球広告が二つあがっています。あれの名は「エアーサイン」です。
 
 ものものの、核心だけを愛することなら、こんなに元気がなくとも心得ています。核心が成長し、色々の形態をとったもの、殊には作品なぞというものの評価は、大学の先生が、お金を儲けるためになされることと考えちまっています。――と申すは、過日来ブランデスの文学史を読んで、少し頭がゴタゴタしたからのことです。
 
 時にかの『月の浜辺』なる曲は、核心のまわりに、多分のエナをつけていて、未進化なものではありますが、そのかわり猶、濃密に核心がこれと分るように見付かります。――昨夜は関口と飲みました。氏は、酒のいい店を御存知です。僕事『月の浜辺』を賞揚したら、氏はこんこんとその愚作たることを説かれました。
 
 僕はあやまりながら、その歌詞を書取って帰りました。「月影白き、波の上、ただひとりきく 調べ。告げよ千鳥、姿いづこかの人。ああ狂ほしの夏の夜。こころなの、別れ。」 さよなら。
     16日                           中也
    喜弘様
 
(※「新かな」に改め、洋数字に変えました。「行空き」を加えてあります。編者。)

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