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中原中也の草々花々(くさぐさはなばな)3「在りし日の歌」から

「在りし日の歌」に現われる「花や草」(植物)を
ピックアップしていきます。
 
<在りし日の歌>
 
「含 羞(はじらい)」
        ――在りし日の歌――
 
なにゆえに こころかくは羞(は)じらう
秋 風白き日の山かげなりき
椎(しい)の枯葉の落窪(おちくぼ)に
幹々(みきみき)は いやにおとなび彳(た)ちいたり
 
枝々の 拱(く)みあわすあたりかなしげの
空は死児等(しじら)の亡霊にみち まばたきぬ
おりしもかなた野のうえは
あすとらかんのあわい縫(ぬ)う 古代の象の夢なりき
 
椎の枯葉の落窪に
幹々は いやにおとなび彳ちいたり
その日 その幹の隙(ひま) 睦(むつ)みし瞳
姉らしき色 きみはありにし
 
その日 その幹の隙 睦みし瞳
姉らしき色 きみはありにし
ああ! 過ぎし日の 仄(ほの)燃えあざやぐおりおりは
わが心 なにゆえに なにゆえにかくは羞じらう…… 
(注)原文には、「あすとらかん」に傍点がつけられています。 
 
※全文を載せました。「在りし日の歌」の巻頭詩のモチーフが
「椎(しい)の枯葉の落窪」「幹々」「枝々」であることに気づいて驚かされます。
 
「むなしさ」
白薔薇(しろばら)の 造花の花弁(かべん)
 凍(い)てつきて 心もあらず
 
「早春の風」
枯草(かれくさ)の音のかなしくて
 
青き女(おみな)の顎(あぎと)かと
 岡に梢(こずえ)のとげとげし
 
「月」
今宵(こよい)月は襄荷(みょうが)を食い過ぎている
済製場(さいせいば)の屋根にブラ下った琵琶(びわ)は鳴るとしも想(おも)えぬ
石灰の匂いがしたって怖(おじ)けるには及ばぬ
灌木(かんぼく)がその個性を砥(と)いでいる
姉妹は眠った、母親は紅殻色(べんがらいろ)の格子を締めた!
 
「三歳の記憶」
椽側(えんがわ)に陽があたってて、
樹脂(きやに)が五彩(ごさい)に眠る時、
柿の木いっぽんある中庭は、
土は枇杷(びわ)いろ 蝿(はえ)が唸(な)く。
 
「六月の雨」
またひとしきり 午前の雨が
菖蒲(しょうぶ)のいろの みどりいろ
 
「雨の日」
わたくしは、花弁(かべん)の夢をみながら目を覚ます。
 
「春」
春は土と草とに新しい汗をかかせる。
 
――薮かげの、小川か銀か小波(さざなみ)か?
薮(やぶ)かげの小川か銀か小波か?
 
「夏の夜」
――疲れた胸の裡を 花弁(かべん)が通る。
 
「幼獣の歌」
黒い夜草深い野にあって、
一匹の獣(けもの)が火消壺(ひけしつぼ)の中で
燧石(ひうちいし)を打って、星を作った。
冬を混ぜる 風が鳴って。
 
「秋の日」
 磧(かわら)づたいの 竝樹(なみき)の 蔭(かげ)に
秋は 美し 女の 瞼(まぶた)
 
「冷たい夜」
丘の上では
棉(わた)の実が罅裂(はじ)ける。
 
「冬の明け方」
――林が逃げた農家が逃げた、
 
「秋の消息」
麻(あさ)は朝、人の肌(はだえ)に追い縋(すが)り
 
「骨」
故郷(ふるさと)の小川のへりに、
半(なか)ばは枯れた草に立って、
見ているのは、――僕?
 
「秋日狂乱」
ポプラがヒラヒラヒラヒラしていて
子供等(こどもら)は先刻(せんこく)昇天した
 
その紫の押花(おしばな)はもうにじまないのか
草の上には陽は照らぬのか
 
「夏の夜に覚めてみた夢」
グランド繞(めぐ)るポプラ竝木(なみき)は
蒼々(あおあお)として葉をひるがえし
 
「春と赤ン坊」
菜の花畑で眠っているのは……
菜の花畑で吹かれているのは……
赤ン坊ではないでしょうか?
 
「雲 雀」
歩いてゆくのは菜の花畑
地平の方へ、地平の方へ
 
眠っているのは、菜の花畑に
菜の花畑に、眠っているのは
菜の花畑で風に吹かれて
眠っているのは赤ん坊だ? 
 
「思い出」
煉瓦工場は音とてもなく
裏の木立で鳥が啼いてた
 
煉瓦工場は、廃れて枯れて、
木立の前に、今もぼんやり
木立に鳥は、今も啼くけど
煉瓦工場は、朽ちてゆくだけ
 
※煉瓦工場と木立は、
切っても切れない関係にあって
「枯れる」「朽ちる」のです。
 
「残 暑」
樹々の梢は 陽を受けてたけど、
僕は庭木に 打水やった
    打水が、樹々の下枝の葉の尖(さき)に
    光っているのをいつまでも、僕は見ていた
 
「除夜の鐘」
それは寺院の森の霧った空……
 
「わが半生」
   外では今宵(こよい)、木の葉がそよぐ。
   はるかな気持の、春の宵だ。
 
「蜻蛉に寄す」
その石くれの 冷たさが
漸(ようや)く手中(しゅちゅう)で ぬくもると
僕は放(ほか)して 今度は草を
夕陽を浴びてる 草を抜く
 
抜かれた草は 土の上で
ほのかほのかに 萎(な)えてゆく
 
「ゆきてかえらぬ――京 都――」
 僕は此(こ)の世の果てにいた。陽(ひ)は温暖に降り洒(そそ)ぎ、風は花々揺っていた。
 
「言葉なき歌」
此処は空気もかすかで蒼(あお)く
葱(ねぎ)の根のように仄(ほの)かに淡(あわ)い
 
「月の光 その一」
お庭の隅の草叢(くさむら)に
隠れているのは死んだ児(こ)だ
 
「月の光 その二」
おおチルシスとアマントが
庭に出て来て遊んでる
 
ほんに今夜は春の宵(よい)
なまあったかい靄(もや)もある
 
月の光に照らされて
庭のベンチの上にいる
ギタアがそばにはあるけれど
いっこう弾き出しそうもない
 
芝生のむこうは森でして
とても黒々しています
 
おおチルシスとアマントが
こそこそ話している間
 
森の中では死んだ子が
蛍のように蹲(しゃが)んでる
 
※全文を掲載しました。
庭、芝生、ベンチ、森という景色に
不思議な遠近感があります。
 
「米 子」
二十八歳のその処女(むすめ)は、
肺病やみで、腓(ひ)は細かった。
ポプラのように、人も通らぬ
歩道に沿(そ)って、立っていた。
 
二十八歳のその処女(むすめ)は、
歩道に沿って立っていた、
雨あがりの午後、ポプラのように。
――かぼそい声をもう一度、聞いてみたいと思うのだ……
 
「正 午」
なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな
 
「春日狂想」
まぶしくなったら、日蔭(ひかげ)に這入(はい)り、
そこで地面や草木を見直す。
苔(こけ)はまことに、ひんやりいたし、
いわうようなき、今日の麗日(れいじつ)。
 
 
「在りし日の歌」にも
「花」の登場は稀(まれ)でした。
 
それゆえ、
「むなしさ(白薔薇)」「菖蒲(六月の雨)」「菜の花(春と赤ン坊)」「桜(正午)」などの花が
鮮烈に刻まれます。
 
 
 

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