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ラフォルグ<1>月

ラフォルグの詩
「お月様のなげきぶし」の上田敏訳は
「在りし日の歌」5番目の「月」にも
影を落しているということが
定説です。
(新編中原中也全集第1巻詩Ⅰ 解題篇)
 
第3連
 
おや、まあ、いつそ有難(ありがた)い
思召(おぼしめし)だが、わたしには
お姉様(あねえさま)のくだすつた
これ、このメダルで沢山よ。
 
の4行目の「メダル」の使い方が
 
「月」の中間連
 
さてベランダの上にだが
見れば銅貨が落ちてゐる、いやメダルなのかア
これは今日昼落とした文子さんのだ
明日はこれを届けてやらう
 
の制作へのヒントとなったと
推測されているのです。
 
そういえば
「山羊の歌」の「都会の夏の夜」には
 
月は空にメダルのやうに
街角(まちかど)に建物はオルガンのやうに、
遊び疲れた男どち唱いながらに帰ってゆく。
――イカムネ・カラアがまがつてゐる――
 
とはじまる冒頭連で
メダルは月の直喩として使われていますし
ランボーの翻訳詩
「孤児等のお年玉」や「音楽堂にて」には
メダルをメタルと表記して使用している、などと
月がらみ、メダルがらみで
「お月様のなげきぶし」が
中原中也の詩に及ぼしている影の例が
列挙されていきます。
 
中原中也は
昭和2年4月23日の日記に
 
世界に詩人はまだ三人しかをらぬ。
ヴェルレエヌ
ラムボオ
ラフォルグ
ほんとだ! 三人きり。
 
と記すほどに
ラフォルグの詩に感銘を受けたことを
ストレートに表明し
やがてはいくつかの翻訳を試みますから
自身の詩作にも
受容が行われるのは
自然のなりゆきでした。
 
上田敏訳のラフォルグ「お月様のなげきぶし」が
「月」のモチーフになったとしても
いっこうにおかしくはないのです。
 
(つづく)
 
 ◇
 
お月様のなげきぶし    
            ジュル・ラフォルグ
 
星の声がする
 
  膝の上、
  天道様の膝の上、
踊るは、をどるは、
  膝の上、
  天道様の膝の上、
星の踊のひとをどり。
 
――もうし、もうし、お月様、
そんなに、つんとあそばすな。
をどりの組へおはひりな。
金の頸環(くびわ)をまゐらせう。
 
おや、まあ、いつそ有難(ありがた)い
思召(おぼしめし)だが、わたしには
お姉様(あねえさま)のくだすつた
これ、このメダルで沢山よ。
 
――ふふん、地球なんざあ、いけ好(すか)ない、
ありやあ、思想の台(だい)ですよ。
それよか、もつと歴(れき)とした
立派な星がたんとある。
 
――もう、もう、これで沢山よ、
おや、どこやらで声がする。
――なに、そりや何(なに)かのききちがひ。
宇宙の舎密(せいみ)が鳴るのでせう。
 
――口のわるい人たちだ、
わたしや、よつぴて起きてよ。
お引摺(ひきずり)のお転婆(てんば)さん、
夜遊(よあそび)にでもいつといで。
 
――こまつちやくれた尼(あま)つちよめ、
へへへのへ、のんだくれの御本尊(ごほんぞん)、
掏摸(すり)の狗(いぬ)のお守番(もりばん)、
猫の恋のなかうど、
あばよ、さばよ。
 
衆星退場。静寂と月光。遥かに声。
  はてしらぬ
  空(そら)の天井(てんじょ)のその下(した)で、
踊るは、をどるは、
  はてしらぬ
  空(そら)の天井(てんじょ)のその下(した)で、
星の踊をひとをどり。
 
 *
 月
 
今宵月は蘘荷(めうが)を食ひ過ぎてゐる
済製場(さいせいば)の屋根にブラ下つた琵琶(びは)は鳴るとしも想へぬ
石炭の匂ひがしたつて怖(おぢ)けるには及ばぬ
灌木がその個性を砥(と)いでゐる
姉妹は眠つた、母親は紅殻色(べんがらいろ)の格子を締めた!
 
さてベランダの上にだが
見れば銅貨が落ちてゐる、いやメダルなのかア
これは今日昼落とした文子さんのだ
明日はこれを届けてやらう
 
ポケットに入れたが気にかゝる、月は蘘荷を食ひ過ぎてゐる
灌木がその個性を砥(と)いでゐる
姉妹は眠つた、母親は紅殻色の格子を締めた!
 
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
 
 
 
 
 
 

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