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中原中也の詩に現われる色の色々4

その1

中原中也は詩集「山羊の歌」「在りし日の歌」に発表した詩のほかに
文芸誌・詩誌や雑誌・新聞などのメディアに多くの詩を発表しました。
これを発表年月順にまとめたものが「生前発表詩篇」です。

短歌を除いた「生前発表詩篇」に現われる「色」を
続けて見ていきましょう。

「夏と私」
真ッ白い嘆かいのうちに、

真ッっ白い嘆きを見たり。

「ピチベの哲学」
色蒼ざめたお姫様がいて……

「寒い!」
自動車の、タイヤの色も寒々と

鈍色(にびいろ)の空にあっけらかん。

「雨の降るのに」
顔はしらんで
あぶらぎり

「落日」
褐(かち)のかいなをふりまわし、ふりまわし、

「倦怠」
倦怠の谷間に落つる
この真ッ白い光は

「夏の明方年長妓が歌った」
空が白んだ、夏の暁(あけ)だよ

「夢」
黒い 浪間に 小児と 母の、
白い 腕(かいな)の 踠(もが)けるを 見た。

「秋を呼ぶ雨」
窓が白む頃、鶏の声はそのどしゃぶりの中に起ったのです。

その煙突は白く、太くって、傾いていて、

墓石のように灰色に、雨をいくらでも吸うその石のように、

「漂々と口笛吹いて」
褐色(かちいろ)の 海賊帽子 ひょろひょろの

野分(のわき)の 色の 冬が 来るのサ

「郵便局」
手をお医者さんの手のようにまで、浅い白い洗面器で洗い、

「幻想」
空は晴れ、大地はすっかり旧に復し、野はレモンの色に明(あか)っていた。

「かなしみ」
白き敷布のかなしさよ夏の朝明け、

何事もなくただ沈湎の一色に打続く僕の心は、悲しみ呆けというべきもの。

青い卵か僕の心、

真白き時計の文字板に、

悲しみばかりの藍の色、

「或る夜の幻想」(1・3)
かわたれどきの色をしていた

「道化の臨終」
清浄こよなき漆黒のもの、
暖(だん)を忘れぬ紺碧を……

紫色に 泣きまする。

「夏日静閑」
用務ありげな白服の紳士が乗っていた。

40作品を一気に読んでしまいました。

「色」のことを忘れそうになるほど
面白い詩がわんさかあるのを改めて知りますが
ここでは「色」から目を離しません。

めぼしいものだけを拾っておきますと……。

真ッ白い嘆かい
真ッっ白い嘆き
褐(かち)のかいな
野分(のわき)の 色の 冬
野はレモンの色に
白き敷布のかなしさ
青い卵
悲しみばかりの藍の色
かわたれどきの色
紫色に 泣き

時折、目が釘付けになる使い方があります。

その2

詩集「山羊の歌」「在りし日の歌」や「生前発表詩篇」は
詩人自らの意志で発表したものですが
どこにも発表されなかった完成作品や未完成作品を
一つにまとめたのが「未発表詩篇」というカテゴリーです。

「未発表詩篇」は
まず作品がどのような形で残されたか
ノートである場合や原稿用紙である場合などがありますが
それらの形によって分類され
そうした分類の中で制作日時順に整理されています。

もっとも古いものが「ダダ手帖」ですが
これは形としては残されていない形です。
戦争で消失してしまったノートの中の詩が
消失する前に論評され発表されていたために残った作品で
「タバコとマントの恋」「ダダ音楽の歌詞」という二つの詩があります。

ここに「色」は現われません。

次は「ノート1924」というこれも京都で作られたダダ時代の作品ノートですが
なかなか「色」は現われません。
6番目の「自滅」に初めて
俺は灰色のステッキを呑んだ
――と登場します。

以下、

「倦怠に握られた男」
灰色の、セメント菓子を噛みながら

「想像力の悲歌」
赤ちゃけた
麦藁帽子をアミダにかぶり

「春の夕暮」
アンダースロウされた灰が蒼ざめて

ポトホトと蝋涙に野の中の伽藍は赤く

「幼き恋の回顧」
ソーセージが
紫色に腐れました――

(何と物酷いのです)
あの白ッ、黒い空の空――

あんなに空は白黒くとも
あんなに海は黒くとも

「旅」
青い紙ばかり欲しくて
それなのに唯物史観だった

「呪詛」
黒い着物と痩せた腕

「冬と孤独と」
黒い雪と火事の半鐘――

――と、ここまでが1924年(大正13年)に
京都で作られた純ダダ詩に現われる「色」ですが
現われる頻度はかなり小さいことが分かります。

あったとしても
ほぼ「写実の色」をひとひねりしたような単純な修辞の域
もしくは難解であるばかりの域などにとどまります。

中原中也のダダに
「色」は入り込みにくい何かがあったと言えるのでしょうか。
そんなこと言えないのでしょうか。
まったく偶然のことでしょうか。

そうでありながら、

 

灰色の、セメント菓子
白ッ、黒い空の空
空は白黒く
青い紙
黒い雪
……などの快活で輪郭のはっきりした表現が続いています。

 

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