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全共闘世代が読んだ中原中也・清水昶の場合

わたしは中原中也のあまり良い読者ではない。好きになれなかった。中也の好きなひとびとは熱病のように彼の作品に憑かれるらしいが、たとえば「汚れつちまつた悲しみに」のような作品にみられる教科書的な感傷性をどうにもわたしには受け容れる余地がなかったのである。

――と、「アウトサイダーの悲哀・中原中也試論」を書き出すのは
1940年生まれの詩人・清水昶(しみず・あきら)です。

2011年に亡くなりましたが
学生の頃、全共闘運動の現場にいたことがよく知られている詩人で
終戦時、学齢に達していない世代です。

長田弘より1歳若いということですから
幼少期に焼け跡で遊んだという意味では同じですが
詩を発信しはじめたのが学生時代ということで
全共闘世代の詩人ということにしておきます。

清水昶は、

中也には朔太郎のような病的にとぎすまされた感性にも静雄のような浪漫的なはげしさしも光太郎のような剛直さにも、どこか欠けていて、妙に才気走った言葉への感覚が宙に浮いたまま流れているようで、そんな中也の作品から永く遠ざけていた。

――と先の文に続けた後で、
「しかしながら中也に関して一度だけ、びっくりさせられたことがある。」として、

60年代前半、京都で学生であった頃、暇潰しに裕次郎と浅岡ルリ子のでる日活の恋愛映画をみていたら、その映画に突然、中也の作品「骨」が登場したのである。たしか裕次郎がピアノを弾きながら歌っていた。裕次郎と中也の唐突な結びつき、それに中也の詩が「唄」になるということは、わたしには驚きであった。

後にレコード化されたので、わざわざ、わたしは買い求めたが、大衆娯楽映画のなかに、あえて中也の詩を引用する熱烈な「中也党」のシナリオライターがいるということは、わたしに中也の詩の読者への根強い浸透力を、あらためて感じさせたのである。

――と記します。

60年代前半に、日活の恋愛映画を見ていたというのは
その後の60年代後半に、高倉健の「網走番外地シリーズ」などを見て
学生運動の合間にエア抜きをするような流れの中にあったことを示していて
いかにも全共闘世代らしいですね。

全共闘世代はビートルズ世代ともいえるし、
雑多な関心、自由な暮らしぶり、多様な文化の洗礼を受けている……などの特徴がありますから
中原中也との邂逅(かいこう)は必然であったように見えます。

その詩人は、
裕次郎の歌唱に促されて「骨」を発見したといっているようですが
これは発見というよりは
それまで気づかないでいたものの再発見
といったほうが近い出会いだったに違いありません。

そこのところを清水は、

永くわたしを中也の作品から遠ざけていたものは、いわば、中也に対する近親憎悪のような感覚であったと、いまのわたしは考えている。

――と述べています。

いま、というのは
「アウトサイダーの悲哀」が初出した
「ユリイカ」1974年9月号の時点を指します。

石原裕次郎の歌う「骨」が
You Tubeで聴けます。

石原裕次郎の「骨」


 骨
ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ、
ヌックと出た、骨の尖(さき)。

それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。

生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこともある、
と思へばなんとも可笑(をか)しい。

ホラホラ、これが僕の骨——
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?

故郷(ふるさと)の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて、
見てゐるのは、——僕?
恰度(ちやうど)立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。

※「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。

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