中原中也のオノマトペ2「山羊の歌」後半部から
「山羊の歌」に出てくるオノマトペを
後半部「少年時」「みちこ」「秋」「羊の歌」と章順に見ていきます。
◇
「少年時」
私は希望を唇に噛みつぶして
私はギロギロする目で諦(あきら)めていた……
噫(ああ)、生きていた、私は生きていた!
「盲目の秋」
それはしずかで、きらびやかで、なみなみと湛(たた)え、
去りゆく女が最後にくれる笑(えま)いのように、
いきなり私の上にうつ俯(ぶ)して、
それで私を殺してしまってもいい。
すれば私は心地よく、うねうねの暝土(よみじ)の径(みち)を昇りゆく。
「わが喫煙」
おまえのその、白い二本の脛(すね)が、
夕暮(ゆうぐれ)、港の町の寒い夕暮、
にょきにょきと、ペエヴの上を歩むのだ。
わんわんいう喧騒(どよもし)、むっとするスチーム、
さても此処(ここ)は別世界。
「雪の宵」
ふかふか煙突(えんとつ)煙吐(けむは)いて、
赤い火の粉(こ)も刎(は)ね上る。
「憔 悴」
そして理窟(りくつ)はいつでもはっきりしているのに
気持の底ではゴミゴミゴミゴミ懐疑(かいぎ)の小屑(おくず)が一杯です。
◇
ギロギロする目
――が飛び抜けて強いインパクトを放っています。
うねうねの暝土(よみじ)の径(みち)
わんわんいう喧騒(どよもし)
ゴミゴミゴミゴミ懐疑(かいぎ)の小屑(おくず)
――も味わいがありますね。
にょきにょきと、
――が、恋人・泰子の足の形容に使われているのも面白い。
◇
使う数はそれほど多くはないことが確認できました。
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