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中原中也のオノマトペ3「在りし日の歌」から

「在りし日の歌」に出てくるオノマトペをひろっていきます。

「夜更の雨」
雨は 今宵(こよい)も 昔 ながらに、
  昔 ながらの 唄を うたってる。
だらだら だらだら しつこい 程だ。

「六月の雨」
たちあらわれて 消えゆけば
うれいに沈み しとしとと
畠(はたけ)の上に 落ちている
はてしもしれず 落ちている

「春の日の歌」
午睡(ごすい)の 夢の ふくよかに、
野原の 空の 空のうえ?
うわあ うわあと 涕(な)くなるか

「湖 上」
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう、
風も少しはあるでしょう。

「秋日狂乱」
今日はほんとに好いお天気で
空の青も涙にうるんでいる
ポプラがヒラヒラヒラヒラしていて
子供等は先刻昇天した

ではああ、濃いシロップでも飲もう
冷たくして、太いストローで飲もう
とろとろと、脇見もしないで飲もう
何にも、何にも、求めまい!……

「雲雀」
碧(あーお)い 碧い空の中
ぐるぐるぐると 潜りこみ
ピーチクチクと啼きますは
ああ 雲の子だ、雲雀奴だ

歩いてゆくのは菜の花畑
地平の方へ、地平の方へ
歩いてゆくのはあの山この山
あーおい あーおい空の下

「思い出」
沖の方では波が鳴ろうと、
私はかまわずぼんやりしていた。
ぼんやりしてると頭も胸も
ポカポカポカポカ暖かだった

ポカポカポカポカ暖かだったよ
岬の工場は春の陽をうけ、
煉瓦工場は音とてもなく
裏の木立で鳥が啼いてた

「残 暑」
畳の上に、寝ころぼう、
蝿はブンブン 唸ってる

「曇 天」
 ある朝 僕は 空の 中に、
黒い 旗が はためくを 見た。
 はたはた それは はためいて いたが、
音は きこえぬ 高きが ゆえに。

 手繰(たぐ)り 下ろそうと 僕は したが、
綱(つな)も なければ それも 叶(かな)わず、
 旗は はたはた はためく ばかり、
空の 奥処(おくが)に 舞い入る 如(ごと)く。

 かかる 朝(あした)を 少年の 日も、
屡々(しばしば) 見たりと 僕は 憶(おも)う。
 かの時は そを 野原の 上に、
今はた 都会の 甍(いらか)の 上に。

 かの時 この時 時は 隔つれ、
此処(ここ)と 彼処(かしこ)と 所は 異(ことな)れ、
 はたはた はたはた み空に ひとり、
いまも 渝(かわ)らぬ かの 黒旗よ。

「一つのメルヘン」
秋の夜(よ)は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射しているのでありました。

陽といっても、まるで硅石(けいせき)か何かのようで、
非常な個体の粉末のようで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもいるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでいてくっきりとした
影を落としているのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄(いままで)流れてもいなかった川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れているのでありました……

「月の光 その二」
おおチルシスとアマントが
こそこそ話している間

「村の時計」
時を打つ前には、
ぜいぜいと鳴った

「或る男の肖像」
剃(そ)りたての、頚条(うなじ)も手頸(てくび)も
どこもかしこもそわそわと、
寒かった。

「正 午」
       丸ビル風景  
ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
月給取(げっきゅうとり)の午休(ひるやす)み、ぷらりぷらりと手を振って
あとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちゃな小ッちゃな出入口
空はひろびろ薄曇(うすぐも)り、薄曇り、埃(ほこ)りも少々立っている
ひょんな眼付(めつき)で見上げても、眼を落としても……
なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな
ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちゃな小ッちゃな出入口
空吹く風にサイレンは、響き響きて消えてゆくかな
 
「春日狂想」
神社の日向(ひなた)を、ゆるゆる歩み、
知人に遇(あ)えば、にっこり致(いた)し、
飴売爺々(あめうりじじい)と、仲よしになり、
鳩に豆なぞ、パラパラ撒(ま)いて、

参詣人等(さんけいにんら)もぞろぞろ歩き、
わたしは、なんにも腹が立たない。

一気に「在りし日の歌」を通し読みしてしまいました。

「雲雀」の中に
碧(あーお)い 碧い空の中
あーおい あーおい空の下
――とあり
ぐるぐるぐると
ピーチクチクと
――というオノマトペと混乱しそうになります。

あーおい あーおい、とルフランにし平がなにしたことで
限りなくオノマトペに近い「形容詞」が演出されているように感じられますが
文法的にはこれはオノマトペではないでしょう。

詩の言葉のルールをギリギリまで守りながら
文法より詩が大事と
詩人は最後に言うでしょうが。

繰り返し(ルフラン)にすればただちにオノマトペになるものではありませんが
とおくとおく(言葉なき歌)
寒い寒い 流れ流れて(冬の長門峡)
――なども形容詞の繰り返しがオノマトペ効果を生んでいます。

オノマトペでなくとも
ひえびえ(秋の消息)
ホラホラ(骨)
しらじら(骨)
いよいよ(秋日狂乱)
やれやれ(夏の夜に覚めてみた夢)
――のような形容詞・副詞、間投詞もあります。

「曇天」「一つのメルヘン」「正午」の3作は
全行を載せました。
これらの詩には、「オノマトペの技」の極致といってもよいものが見られます。
いわば「オノマトペ3部作」です。

「曇天」から「一つのメルヘン」へ
「一つのメルヘン」から「正午」へ。
中原中也が詩境を極めていった軌跡の
頂上部のホップ=ステップ=ジャンプがここにあり
その詩法のコア(中核)にあるのがルフランとオノマトペです。

 

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