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中原中也の草々花々1(くさぐさはなばな)「山羊の歌」から

「色」「オノマトペ」「鳥獣虫魚」と見てきたのだから
勢いで「花や草」についても見ていくことにしました。
 
百科辞典を引き廻し
鳥の名や花の名や
みたこともないそれなんか
ひっぱり出して書いたって
――だがそれ程想像力があればね――
 
 
未発表詩篇・(テンピにかけて)に
こんなふうに書いた詩人は
すでにランボーの「酔いどれ船」を読んでいたのでしたか?
 
海を見たことのなかった少年ランボーが
海の一大スペクタクルを書き上げたことぐらい
富永太郎から聞かされていたのかもしれません。
 
辞書を引こうが
雑誌で見ようが
シネマで知ろうが
ニュースで読もうが
問題は想像力。
詩の言葉に変成できるかできないか――。
ザット・イズ・クエスチョン!
 
中原中也の技=マジックの現場を見ていきましょう。
 
 
<山羊の歌>
 
「春の夜」
燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに
  一枝(ひとえだ)の花、桃色の花。
 
「朝の歌」
樹脂の香(か)に 朝は悩まし
  うしないし さまざまのゆめ、
森竝(もりなみ)は 風に鳴るかな
 
「臨 終」
  水涸(か)れて落つる百合花(ゆりばな)
  ああ こころうつろなるかな
 
「黄 昏」
渋った仄暗(ほのぐら)い池の面(おもて)で、
寄り合った蓮(はす)の葉が揺れる。
蓮の葉は、図太いので
こそこそとしか音をたてない。
 
なにが悲しいったってこれほど悲しいことはない
草の根の匂いが静かに鼻にくる、
畑の土が石といっしょに私を見ている。
 
「深夜の思い」
林の黄昏は
擦(かす)れた母親。
虫の飛交(とびか)う梢(こずえ)のあたり、
舐子(おしゃぶり)のお道化(どけ)た踊り。
 
波うつ毛の猟犬見えなく、
猟師は猫背を向(むこ)うに運ぶ。
森を控えた草地が
  坂になる!
 
「帰 郷」
柱も庭も乾いている
今日は好(よ)い天気だ
    椽(えん)の下では蜘蛛(くも)の巣が
    心細そうに揺れている
 
山では枯木も息を吐(つ)く
ああ今日は好い天気だ
    路傍(みちばた)の草影が
    あどけない愁(かなし)みをする
 
これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いている
    心置(こころおき)なく泣かれよと
    年増婦(としま)の低い声もする
 
ああ おまえはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云(い)う
 
 
ここまで見てきて
「朝の歌」の
森竝(もりなみ)は 風に鳴るかな――や
「深夜の思い」の
虫の飛交(とびか)う梢(こずえ)のあたり、――を採取するかしないかを迷い
「花と草」の詩へのなじみ方の「動物」との違いや
「花」と「草」の違いに気づきます。
 
風景として
「草」は地味の場合が多そうな予感がしますから
見過ごし勝ちになりますが
それをよく洩らさないように見ていきます。
 
「帰郷」を全文載せたのは
そういう意味も含めて
 
第1連で、椽の下では蜘蛛の巣が心細そうに揺れていて
第2連で、山で枯木が息を吐き、路傍の草影があどけない愁(かなし)みをする
第3連で、これらを「私の故里(ふるさと)だ」と歌うほどに
動物(=蜘蛛の巣)と草々(=枯木や草影)が主役(=ふるさと)だからです。
ふるさとを叙述するのに蜘蛛の巣と枯れ木と草影で足りているのです。
 
花々(はなばな)が主役になる場合は
たとえば「春の思い出」の冒頭連
 
摘み溜(た)めしれんげの華(はな)を
  夕餉(ゆうげ)に帰る時刻となれば
立迷う春の暮靄(ぼあい)の
    土の上(へ)に叩きつけ
 
――がすぐさま思い浮かびますが
これは意外に少ないケースであるかもしれません。
 
いや、断定できません。
それをこれから見ていくのですから。
 
 
 

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