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夜更の雨/ベルレーヌへの途上で<11>上田敏訳のラフォルグ「お月様のなげきぶし」

ジュル・ラフォルグとは
どんな詩人かなどとは
とりあえず問わないことにして
上田敏が「お月様のなげきぶし」の中で
「舎密=せいみ」をどのように使っているか――
 
その点に集中して
この詩をもう少しじっくり読んでみれば
 
どうやら
群れて踊っている星々が
孤独を装って澄ましている月を
踊りの輪の中に入れようとして
もし輪の中に入れば金の首輪を差し上げようと
誘うのだが
 
月は
ありがたいお誘いですが
わたしは
姉さんである太陽がくださった
地球だけで十分ですよ、と
やんわり断るのに対して
 
地球なんてのは
なんといけ好かない
思想の台にしか過ぎないものに
ぞっこんなんですね
もっとれっきとして立派な星が
いっぱいあるのにねえと
星々は恨みがましがります
 
いや、もうけっこう
これでたくさん、と月が言ったところで
どこからか、だれかの声がするのを聞くのですが
そう言った月を言いくるめるように
 
なにそりゃ、なんかの聞き違い
宇宙の舎密(せいみ)が鳴るのでせう。
 
と、それは聞き耳を立てるほどのものではなく
宇宙の塵(ちり)か何か
それは、雷のようなものかが
鳴っているのでしょうよ
と、そんなものに気をとられずに
さ、さ、踊りましょう
(以下略)
 
などと会話する場面で
使われているのです。
 
月と星と太陽が
それぞれ象徴する存在と
そのやりとりの意味を考究すれば
この詩をもっと深く理解するのかもしれませんが
衆に頼んで踊りを楽しむ星々と
つんと澄ました月との
おもしろくおかしく
機知に富んだやりとりが楽しめて
月の嘆きに多少なりとも感応できれば
この詩の近くにいるんじゃないでしょうか
 
問題は
舎密=せいみ=Chemie=化学です。
中原中也の
 
酒場の 軒燈(あかり)の 腐つた 眼玉よ、
  遐(とほ)くの 方では 舎密(せいみ)も 鳴つてる。
 
この2行です。
 
(つづく)
 
 ◇
 
お月様のなげきぶし    
            ジュル・ラフォルグ
 
星の声がする
 
  膝の上、
  天道様の膝の上、
踊るは、をどるは、
  膝の上、
  天道様の膝の上、
星の踊のひとをどり。
 
――もうし、もうし、お月様、
そんなに、つんとあそばすな。
をどりの組へおはひりな。
金の頸環(くびわ)をまゐらせう。
 
おや、まあ、いつそ有難(ありがた)い
思召(おぼしめし)だが、わたしには
お姉様(あねえさま)のくだすつた
これ、このメダルで沢山よ。
 
――ふふん、地球なんざあ、いけ好(すか)ない、
ありやあ、思想の台(だい)ですよ。
それよか、もつと歴(れき)とした
立派な星がたんとある。
 
――もう、もう、これで沢山よ、
おや、どこやらで声がする。
――なに、そりや何(なに)かのききちがひ。
宇宙の舎密(せいみ)が鳴るのでせう。
 
――口のわるい人たちだ、
わたしや、よつぴて起きてよ。
お引摺(ひきずり)のお転婆(てんば)さん、
夜遊(よあそび)にでもいつといで。
 
――こまつちやくれた尼(あま)つちよめ、
へへへのへ、のんだくれの御本尊(ごほんぞん)、
掏摸(すり)の狗(いぬ)のお守番(もりばん)、
猫の恋のなかうど、
あばよ、さばよ。
 
衆星退場。静寂と月光。遥かに声。
  はてしらぬ
  空(そら)の天井(てんじょ)のその下(した)で、
踊るは、をどるは、
  はてしらぬ
  空(そら)の天井(てんじょ)のその下(した)で、
星の踊をひとをどり。
 
 *
 夜更の雨
 
――ヱ゛ルレーヌの面影――
 
雨は 今宵も 昔 ながらに、
  昔 ながらの 唄を うたつてる。
だらだら だらだら しつこい 程だ。
 と、見るヱ゛ル氏の あの図体(づうたい)が、
倉庫の 間の 路次を ゆくのだ。
 
倉庫の 間にや 護謨合羽(かつぱ)の 反射(ひかり)だ。
  それから 泥炭の しみたれた 巫戯(ふざ)けだ。
さてこの 路次を 抜けさへ したらば、
  抜けさへ したらと ほのかな のぞみだ……
いやはや のぞみにや 相違も あるまい?
 
自動車 なんぞに 用事は ないぞ、
  あかるい 外燈(ひ)なぞは なほの ことだ。
酒場の 軒燈(あかり)の 腐つた 眼玉よ、
  遐(とほ)くの 方では 舎密(せいみ)も 鳴つてる。
 
(角川ソフィア文庫「中原中也全詩集」より)
 

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