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中原中也の詩に現われる色の色々1

その1

中原中也は実に色々な色を
詩の中に登場させています。

「色」とか「いろ」と表記されていたり
「色の名前」だけがあるものだったりします。

「山羊の歌」から拾ってみますと……

「春の日の夕暮」
アンダースローされた灰が蒼ざめて 

「サーカス」
茶色い戦争ありました。

それの近くの白い灯が

「春の夜」
一枝の花、桃色の花。砂の色せる絹衣。

蕃紅色(サフランいろ)の湧きいずる

「朝の歌」
天井に朱(あか)きいろいで 
空は今日 はなだ色らし

「臨終」
秋空は鈍色(にびいろ)にして 

白き空盲(めし)いてありて
白き風冷たくありぬ

「秋の一日」
花崗岩のかなたの目の色。 

「冬の雨の夜」
竟(つい)に密柑の色のみだった?…… 

「凄じき黄昏」
銀紙(ぎんがみ)色の竹槍の 

「夕照」
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。 

「宿酔」
もう不用になったストーブが
白っぽく銹(さ)びている。 

「少年時」
黝い石に夏の日が照りつけ、
庭の地面が、朱色に睡っていた。 

麦田には風が低く打ち、
おぼろで、灰色だった。

「盲目の秋」
その間、小さな紅の花が見えはするが、

「わが喫煙」
おまえのその、白い二本の脛(あし)が、

「妹よ」
湿った野原の黒い土、短い草の上を

「木蔭」
夏の昼の青々した木蔭は

「心象」
白き天使のみえ来ずや

その2

「色」とか「いろ」と表記されていたり
「色の名前」があるものだけを
「山羊の歌」から拾って「少年時」の章までパラパラめくってみました。

「山羊の歌」は
「初期詩篇」
「少年時」
「みちこ」
「秋」
「羊の歌」
――という章立てであることを
今更ながら確認します。
「みちこ」の章から続けます。

現代かな表記にしてあります。

「みちこ」
はるかなる空、あおき浪、

磯白々とつづきけり。

しどけなき、なれが頸(うなじ)は虹にして

海原はなみだぐましき金(きん)にして夕陽をたたえ

「更くる夜」
昔ながらの真っ黒い武蔵野の夜です。

「秋」
鈍い金色を滞びて、空は曇っている、――相変わらずだ、――

みょうに真鍮の光沢かなんぞのような笑を湛えて彼奴は、

彼の目は、沼の水が澄んだ時かなんかのような色をしてたあね。

「修羅街輓歌」
空は青く、すべてのものはまぶしくかがやかしかった……

「雪の宵」
赤い火の粉も刎ね上る。

「時こそ今は……」
暮るる籬(まがき)や群青(ぐんじょう)の

「羊の歌」
かの女の心は密柑の色に

「憔悴」
今日も日が照る 空は青いよ

空に昇って 虹となるだろうとおもう……

雪といえば白
夜は黒
まっ暗も黒
光は無色? 輝いている色?
曇天はグレー
……

ここではこれらは除外しました。
これらを挙げていけば
言葉に色がないものなんてありませんから。

 

「在りし日の歌」「生前発表詩篇」「未発表詩篇」についても
しつっこく「色」だけを見ていきます。

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