未発表詩篇〜草稿詩篇(1933年~36年)(インデックス)
ああわれは おぼれたるかな 物音は しずみゆきて 〜(ああわれは おぼれたるかな)
僕は知ってる煙が立つ 三原山には煙が立つ 〜小 唄
空は晴れてても、建物には蔭があるよ、春、早春は心なびかせ、〜
形式整美のかの夢や 羅馬(ローマ)の夢はや地に落ちて、〜(形式整美のかの夢や)
風が吹く、冷たい風は 窓の硝子に蒸気を凍りつかせ 〜(風が吹く、冷たい風は)
此の年、三原山に、自殺する者多かりき。
宵の銀座は花束捧げ、舞うて踊って踊って舞うて、〜(
夜が更けて、一つの虫の声がある。〜虫の声
僕は奴の欺瞞に腹を立てている 奴の馬鹿を奴より一層馬鹿者の前に匿すために、〜怨 恨
夏の朝よ、蝉よ、 砂に照りつける陽よ…… 〜怠 惰
蝉が鳴いている、蝉が鳴いている 蝉が鳴いているほかになんにもない! 〜蝉
なんの楽しみもないのみならず 悲しく懶い日は日毎続いた。〜夏
友達よ、僕が何処にいたか知っているか? 僕は島にいた、島の小さな漁村にいた。〜夏過けて、友よ、
ふくらはぎを眺めながら 燃える血のことを思った。〜燃える血
温泉町のほの暗い町を、僕は歩いていた、ひどく俯いて。〜夏の記臆
しののめの、よるのうみにて 汽笛鳴る。〜童 謡
萎びたコスモスに、鹿革の手袋をはめ、それを、霊柩車に入れて、
夏の午前よ、いちじくの葉よ、葉は、乾いている、
小川が青く光っているのは あれは、空の色を映しているからなんだそうだ。〜(
かがやかしい朝よ、紫の、物々の影よ、〜朝
雀が鳴いている 朝日が照っている 〜朝
どうともなれだ 俺には何がどうでも構わない 〜玩具の賦
亡びてしまったのは 僕の心であったろうか 〜昏 睡
夜明けが来た。雀の声は生唾液(なまつばき)に似ていた。〜
雀の声が鳴きました 雨のあがった朝でした 〜朝
袖の振合い他生の縁 僕事、気違いには御座候えども 〜狂気の手紙
悲しみは、何処まででもつづく 蛮土の夜の、お祭りのように、その宵のように、〜咏嘆調
消えていったのは、あれはあやめの花じゃろか? 〜秋岸清凉居士
劃然とした石の稜 あばた面なる墓の石 〜月下の告白
さよなら、さよなら! いろいろお世話になりました 〜別 離
こんな悪達者な人にあっては 僕はどんな巻添えを食うかも知れない 〜悲しい歌
海は、お天気の日には、綺麗だ。〜(海は、お天気の日には)
お天気の日の海の沖では 子供が大勢遊んでいます 〜(お天気の日の海の沖では)
星は綺麗と、誰でも云うが、それは大概、ウソでしょう 〜野卑時代
何、あれはな、空に吊るした銀紙じゃよ こう、ボール紙を剪って、それに銀紙を張る、〜星とピエロ
ほのかにほのかに、ともっているのは これは一つの誘蛾燈、稲田の中に 〜誘蛾燈詠歌
なんにも書かなかったら みんな書いたことになった 〜(なんにも書かなかったら)
一本の藁は畦の枯草の間に挟って ひねもす陽を浴びぬくもっていた 〜(一本の藁は畦の枯草の間に挟って)
山に清水が流れるように その陽の照った山の上の 〜坊 や
僕には僕の狂気がある 僕の狂気は蒼ざめて硬くなる 〜僕が知る
おまえが花のように 淡鼠の絹の靴下穿いた花のように 〜(おまえが花のように)
それは実際あったことでしょうか それは実際あったことでしょうか 〜初恋集
木の下かげには幽霊がいる その幽霊は、生れたばかりの 〜月夜とポプラ
自然は、僕という貝に、花吹雪きを、
僕はもう、何も欲しはしなかった。暇と、
ウー……と、警笛が鳴ります、ウウウー……と、皆さん、
夜の海より僕唾(つば)吐いた ポイ と音して唾とんでった 〜大島行葵丸にて
生きているのは喜びなのか 生きているのは悲みなのか 〜春の消息
ゆめに、うつつに、まぼろしに…… 見ゆるは、何ぞ、いつもいつも 〜吾子よ吾子
桑名の夜は暗かった 蛙がコロコロ鳴いていた 〜桑名の駅
龍巻の頸は、殊にはその後頭は 老廃血(ふるち)でいっぱい 〜龍 巻
いとしい者の上に風が吹き 私の上にも風が吹いた 〜山上のひととき
山に登って風に吹かれた 心は寒く冷たくあった 〜四行詩
秋が来た。また公園の竝木路は、〜(秋が来た)
或る日君は僕を見て嗤うだろう、
松吹く風よ、寒い夜の われや憂き世にながらえて 〜夜半の嵐
山の上には雲が流れていた あの山の上で、お弁当を食ったこともある…… 〜雲
砂漠の中に、火が見えた! 〜砂 漠
その夜は雨が、泣くように降っていました。瓦はバリバリ、
しののめの、よるのうみにて 汽笛鳴る。〜小唄二編
(人と話が合うも合わぬも 所詮は血液型の問題ですよ)?… 〜断 片
雨を含んだ暗い空の中に 大きいポプラは聳(そそ)り立ち、〜暗い公園
夏の夜の、博覧会は、哀しからずや 雨ちょと降りて、やがてもあがりぬ 〜夏の夜の博覧会はかなしからずや
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