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春宵感懐

 
雨が、あがって、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵(よい)。
 なまあったかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息(ためいき)が、
 なんだかはるかな、幻想が、
湧(わ)くけど、それは、掴(つか)めない。
 誰にも、それは、語れない。

誰にも、それは、語れない
 ことだけれども、それこそが、
いのちだろうじゃないですか、
 けれども、それは、示(あ)かせない……

かくて、人間、ひとりびとり、
 こころで感じて、顔見合(かおみあわ)せれば
にっこり笑うというほどの
 ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがって、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあったかい、風が吹く。
 

▶音声ファイル(※クリックすると音が出ます)

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ひとくちメモ

昭和11年(1936年)は、

中原中也の死ぬ1年前ですが

この年、

かなり精力的に

さまざまなメディアへ寄稿しています。

「在りし日の歌」中の作品で

昭和11年の7月号に発表されたものに

「わが半生」(四季)

「春宵感懐」(文学界)

「曇天」(改造)の3作がありますが

「文学界」への出品は

小林秀雄が編集者の位置にいるのですから

他誌(紙)より多くなるのは必然的です。

「春宵感懐」は、

58作を収めた「在りし日の歌」の

40番目にある作品です。

句読点を

入れられる、

あらゆる場所に入れ、

七五調を保っています。

雨が、あがつて、風が吹く。

これは、

雨があがつて、風が吹く。

で、OKだったはずですが、

詩人は、なんらかの意図で

「文節」で区切りをつけたかったのでしょう。

端正な七五調に

したくなかったのかもしれません。

でも、これは

七五調でしょう。

流麗感が出ていますし、

全体がリズミカルですし、

第1連の

みなさん、という呼びかけが

スムーズに詩に溶け込んでいることを

サポートしています。

この第1連は

最終の第5連で繰り返されますから

この中の「みなさん」は

ボディーブローのように

利きます。

みなさん、

今夜は、

雨上がりの風が吹き

雲が流れて月を隠す

なまあったかーい日ですよー

なんて、

なぜ、呼びかけなきゃならないのでしょうか。

「在りし日の歌」一番の絶唱

と呼んで差し支えないであろう

「春日狂想」の最終章最終連にも

みなさん、の呼びかけはあります。

こちらは、一オクターブ高い声の感じで

ハイ、みなさん、

と呼びかけるのですが

その「前哨戦」だからでしょうか

これより前に作られた「春宵感懐」では、

さりげなく、

詩句に溶け込んだ感じの

みなさん、です。

春宵は

生暖かい風が吹いて

溜息が出るわ幻想が湧くわ

でも、

そいつの正体は掴めないし、

だれもそいつを語ることもできない

だからこそ

いのち・命というものですが

だからといって、

そのことを示すこともできない

だから、

人間というのは、

一人ひとりが孤独に

心で感じているものを

他人と顔を合わせれば

にっこり、愛想笑いの一つでもして

一生を過ごすのですねえ

そうですよねえ

それにしても

なまあったかい

夜ですねえ。

 

 

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