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無 題

 

緋(ひ)のいろに心はなごみ
蠣殻(かきがら)の疲れ休まる

金色の胸綬(コルセット)して
町を行く細き町行く

死の神の黒き涙腺(るいせん)
美しき芥(あくた)もみたり

自らを恕(ゆる)す心の
展(ひろが)りに女を据(す)えぬ

緋の色に心休まる
あきらめの閃(ひらめ)きをみる

静けさを罪と心得(こころえ)
きざむこと善(よ)しと心得

明らけき土の光に
浮揚する
   蜻蛉となりぬ

▶音声ファイル(※クリックすると音が出ます)



 

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ひとくちメモ

昭和2―3年(1927―28年)に
計画された処女詩集のために
「ノート1924」に記された7篇のうち
「無題(緋のいろに心はなごみ)」は
最後の作品です。
清書稿で完成作品です。
ということは
「ノート1924」の最後の作品です。
 
2行7連の構成で
各行は七五のリズムに統制された文語体。
ダダ一辺倒の晦渋さが消え
定型の中で
伸び伸び歌う詩が完成に向かっています。
 
内容は
都会の暮らしからの疎外
街の中での孤独
彷徨の果ての疲労感
それらの底に
泰子との離別の苦しみ・悲しみが
沈んでいるようで
詩人はいつしか
派手やかな緋の衣装に
心休まるものを感じています。
 
歩きくたびれて
牡蠣殻みたいになったからだが
金色のコルセットを着けて
原色の街の路次をゆく女の後を追いながら
安らぎを覚えているのです
 
その街では
死神の黒い涙と
美しい芥(あくた)とを見ました
 
詩人はこの街に来ようとした
色々な理由が広がる中の
一つに女があることを
自らに許したのです 
 
女たちの着る緋色の着物は
本当に心が休まります
その色は
まるで諦めの閃きというにふさわしく
 
その静けさに罪を覚え
罪をきざむことを善しと覚え
 
明るい土に射す光の中を
浮揚する蜻蛉になったのです
 
最終連は
3行に分けて記されていますが
七五の流れを壊すものではなく
アキツもしくはトンボと読めば
字あまりではなくなります。
 
行を分けて
五七-五-七としたのには
転調で終わらざるを得ない
押さえ切れない叙情があったのかもしれません。
 
すでに「むなしさ」を歌った詩人と
どれほどの時間が経過していたのでしょうか。
両作品の基底に
ふるえるような孤独感が
流れています。
 
ふと
19世紀末ペテルスブルグの
ラスコリニコフを思い出させるような……。

 

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