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除夜の鐘

 
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
千万年も、古びた夜の空気を顫(ふる)わし、
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

それは寺院の森の霧(きら)った空……
そのあたりで鳴って、そしてそこから響いて来る。
それは寺院の森の霧った空……

その時子供は父母の膝下(ひざもと)で蕎麦(そば)を食うべ、
その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出、
その時子供は父母の膝下で蕎麦を食うべ。

その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出。
その時囚人は、どんな心持だろう、どんな心持だろう、
その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出。

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
千万年も、古びた夜の空気を顫わし、
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
 

▶音声ファイル(※クリックすると音が出ます)

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ひとくちメモ

年が押し迫れば

どうしても

年の明ける前に

読んでおきたい作品が

「除夜の鐘」です。

いつ読んだっていいんだよ、と

詩人は穏やかな笑みを見せて

言うかもしれません。

俺の詩は、

季節を入り口にしているものが多いけれど

季節そのものを歌っているものは少ないのさ

季節の感情をきっかけにして

その向こうに目を向けている。

とはいうものの、

「除夜の鐘」は、

年が押し迫った時に

読むのにぴったりですから

静かな心構えになって

読んでみましょう。

近頃は、騒がしい年の瀬ですから

除夜の鐘に耳を澄ますなんてことは

あまりしなくなりましたが、

小学生くらいまで

それが鳴りはじめるのを待つ時間が、

大晦日にあったことを思い出します。

小さいとき、

何度か引越しをしましたが

どんな土地へ行っても

大晦日に除夜の鐘が聞こえてくるのだ、と

知った時、

幼心に不思議な気持ちを抱いたことも

いま、思い出しました。

その音は

千万年も前の昔から、

つまり、ずーっとずーっと昔の、

暗ーい遠ーい空からやってきて、

この古びた時間が堆積した

夜の空気を震わせて、

聞こえてきます。

それは寺院の森の

霧でかすんだような冬の夜の空のあたりで

鳴って、そこから響いてくるのだ。

その時、子供たちは父や母の膝元で

年越しそばを食べていることだろう

その時、銀座や浅草は、

人出で大賑わいだろう

みんな、思い思いに

年越しを感謝し、祈り、喜んでいることだろう……

でも、年越そばを食べる家族たちや、

銀座、浅草の人波に揉まれている人々に

除夜の鐘は聞こえていないかもしれない。

私は、ふと思う。

除夜の鐘が鳴る、その時、

監獄の囚人たちは、

どんな気持ちでいるのだろうか、と。

どんなことを考えたりしているだろうか、と。

暗ーい遠ーい空から

鳴り響いてくる、

この鐘の音を、

どんな気持ちで聞いていることだろう。

 

 

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