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星とピエロ

 
何、あれはな、空に吊るした銀紙じゃよ
こう、ボール紙を剪(き)って、それに銀紙を張る、
それを綱(あみ)か何かで、空に吊るし上げる、
するとそれが夜になって、空の奥であのように
光るのじゃ。分ったか、さもなけりゃ空にあんあものはないのじゃ

そりゃ学者共は、地球のほかにも地球があるなぞというが
そんなことはみんなウソじゃ、銀河系なぞというのもあれは
女共(おなごども)の帯に銀紙を擦(す)り付けたものに過ぎないのじゃ
ぞろぞろと、だらしもない、遠くの方じゃからええようなものの
じゃによって、俺(わし)なざあ、遠くの方はてんきりみんじゃて
         
         (一九三四・一二・一六)

見ればこそ腹も立つ、腹が立てば怒りとうなるわい
それを怒らいでジッと我慢しておれば、神秘だのとも云いたくなる
もともと神秘だのと云う連中(やつ)は、例の八ッ当りも出来ぬ弱虫じゃで
誰怒るすじもないとて、あんまり仕末(しまつ)がよすぎる程の輩(やから)どもが
あんなこと発明をしよったのじゃわい、分ったろう

分らなければまだ教えてくれる、空の星が銀紙じゃないというても
銀でないものが銀のように光りはせぬ、青光りがするってか
そりゃ青光りもするじゃろう、銀紙じゃから喃(のう)
向きによっては青光りすることもあるじゃ、いや遠いってか
遠いには正に遠いいが、そりゃ吊し上げる時綱を途方ものう長うしたからのことじゃ
 

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ひとくちメモ

「星とピエロ」は
「ピチベの哲学」が、
発表された2月に、
遠くはない1934年のいつか
制作された作品です。

この2作品は相似形であり、
兄弟のようなものであり、
どちらも道化の口振りです。
内容までも
片や月、片や星、を
歌っています。

月の美しさを
「ピチベの哲学」は歌いましたが、
「星とピエロ」は、
星の偽物(にせもの)っぽさを歌うかのようです。
あれはな、空に吊るした銀紙ぢやよ、と。

が、そんなことを
詩人が言いたいわけではありません。
道化だから
そう言っているだけに過ぎません。
星が銀紙で出来ている、
と言えば、
人々は、馬鹿扱いするに決まっているから
わざと、そう言うのが道化です。

そんなこと
凡俗どもは、
考えてみたこともないだろ、
と言いたいのが道化です
詩人です。

この口振りは、
「道化の臨終」の口振りと
同じものです。

君ら想はないか、夜毎何処(どこ)かの海の沖に、
火を吹く龍がゐるかもしれぬと。
君ら想はないか、曠野(こうや)の果に、
夜毎姉妹の灯ともしてゐると。

――と、想像力を欠いた凡俗を
挑発するかのように歌った詩人が
ここにもいます。

コチンコチンに堅い頭を
少し柔らかくして
想像の羽根を広げてみてはどうかね
キミ!

キミとは、
ここでは、学者共のことです。

ボール紙を剪(き)つて、それに銀紙を張る、
それを綱(あみ)か何かで、空に吊るし上げる、
するとそれが夜になつて、空の奥であのやうに
光るのぢや。

こう言って、
道化は、
非常識をひけらかし
学者共を挑発します。

銀河系とか
地球のほかにもっと大きな星があることを、
この道化は
知らないかのように
主張します。

「星とピエロ」は

第2連末尾に

(一九三四・一二・一六)と日付が記されていて

この日が制作日と考えられています。

第3、第4連は、

はじめ第2連までで完結していた詩に

続けて書き加えられたものと推定されています。

1934年12月16日に

詩人は山口にいます。

自選詩集「山羊の歌」を刊行し

初めて生まれた子との

対面も果たしました。

宮沢賢治の影響が指摘される作品で

たとえば、詩の冒頭

「何、あれはな、空に吊した銀紙ぢやよ」は

「銀河鉄道の夜」の第1章「午後の授業」で

銀河について先生が生徒たちに

質問する場面が念頭にあったもの

と考えられています。

(新編全集第2巻・解題篇)

「星とピエロ」と同じ日に

「誘蛾燈詠歌」が制作されていますが

これも道化調の歌といわれ

「ピチベの哲学」にはじまる

1934年制作の

道化調詩篇群を構成しています。

この道化調詩篇群を

列挙しておきます

「ピチベの哲学」

「狂気の手紙」

「骨」

「道化の臨終(Etude Dadaistique)」

「お道化うた」

「秋岸清凉居士」

「月下の告白」

「星とピエロ」

「誘蛾燈詠歌」

(なんにも書かなかつたら)

 

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