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正 午

       丸ビル風景
 
 
ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
月給取(げっきゅうとり)の午休(ひるやす)み、ぷらりぷらりと手を振って
あとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちゃな小ッちゃな出入口
空はひろびろ薄曇(うすぐも)り、薄曇り、埃(ほこ)りも少々立っている
ひょんな眼付(めつき)で見上げても、眼を落としても……
なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな
ああ十二時のサイレンだ、サイレンだサイレンだ
ぞろぞろぞろぞろ出てくるわ、出てくるわ出てくるわ
大きなビルの真ッ黒い、小ッちゃな小ッちゃな出入口
空吹く風にサイレンは、響き響きて消えてゆくかな

 

▶音声ファイル(※クリックすると音が出ます)

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ひとくちメモ

中原中也は

サラリーマンを歌った詩をいくつか作りますが

「都会の夏の夜」と双璧をなすといってよいのが

「正午 丸ビル風景」です。

昼休みのサイレンが鳴ると

ワーッとサラリーマンたちが

ビルの小さな玄関からゾロゾロ出てくる様子を

サイレンだサイレンだ

出てくるわ出てくるわ

小ッちやな小ッちやな

ぷらりぷらり

あとからあとから

ぞろぞろぞろぞろ

響き響きて

などと、リフレインを

面白いほど上手に

効果的に使って

ユーモラスな響きの中に

描いています。

まるで

チャップリンが

しがない労働者を見る目と

同じように見えてきます。

あの

あったかいようで

あわれむような

怜悧な眼差し。

詩人には

サラリーマンが

毎日毎日同じことを繰り返す

リフレインそのものでした。

初夏のような

ポカポカ陽気に

桜は満開――。

都心の公園という公園は

サラリーマンが

ブルーシートで

陣取り合戦……。

今や、花見シーズンの風物詩となって久しくなりました。

桜の花を愛でる、なんて

そっちのけで

飲まにゃあ損損♪♪♪

なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな

と、ついつい、

中原中也の名作「正午 丸ビル風景」が

口端(くちは)に上ってくる気分です。

この、

なんのおのれが桜かな、桜かな桜かな

というフレーズには、

頭に「酒なくて」の5字が隠れているのでして、

江戸時代の川柳、

酒なくて なんの己が 桜かな

これを、ルフランの名手である詩人が

昼休みをとる

サラリーマンが

ゾロゾロゾロゾロと

ビルの玄関から出てくる光景の

なんともおかしいような

プラプラした身振りをとらえて……

そうです!

スーダラ節の

サラリーマンは

気楽な稼業と言うけれどーー♪♪

を、思わせる

暢気そうだけれど

真面目そうで

働き者の悲哀を漂わせた姿を

歌っているのです。

「在りし日の歌」の

最後から3番目にこの作品はあり、

最終の「蛙声」、

その手前の「春日狂想」の

暗いイメージへと連なっていく

正午の明るさは

一点の翳りがないゆえに

「死」のイメージを抱え込んでいるとも受けとめらるもので

巨大なビルから

止むことなく吐き出される

サラリ-マンの流れに

都市の病を見た詩人の眼差しを

感じないわけにもいきません。

 

 

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