悲しき朝
河瀬(かわせ)の音が山に来る、
春の光は、石のようだ。
筧(かけい)の水は、物語る
白髪(しらが)の嫗(おうな)にさも肖(に)てる。
雲母(うんも)の口して歌ったよ、
背ろに倒れ、歌ったよ、
心は涸(か)れて皺枯(しわが)れて、
巌(いわお)の上の、綱渡り。
知れざる炎、空にゆき!
響(ひびき)の雨は、濡(ぬ)れ冠(かむ)る!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
われかにかくに手を拍く……
|
|
<ひとくちメモ>
いくつもの巨岩が山をなし
岩と岩との間を流れ落ちてくる滝があります。
水しぶきを浴びながら見上げると
彼方には木々がのぞき
そのまた彼方には
コバルトブルーの空……。
ひっきりなしに聞こえてくるせせらぎの音
春先の陽光はキーンと固く
岩の間を流れ落ちる滝は
まるで
老女の白髪……。
ぼくは歌った
雲母みたいに薄っぺらに口をとがらせて
心の中は涸れていて、皺枯れていて
岩の上で綱渡りしているようだった
でも、だれも知らないだろう!
ぼくの中の炎、
情熱は空に向かって行ったのさ。
河瀬の音が
雨の音になっていよいよ高まって、
ああ心の中までビショビショしてきた!
…………
とにもかくにも
ぼくは手をはたいて……
この手に負えない悲しみに
……折れ合おうと
……したのです
ここにも
詩人宣言があります。