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末黒野

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宿 酔

 

朝、鈍(にぶ)い日が照ってて
  風がある。
千の天使が
  バスケットボールする。

私は目をつむる、
  かなしい酔いだ。
もう不用になったストーヴが
  白っぽく銹(さ)びている。

朝、鈍い日が照ってて
  風がある。
千の天使が
  バスケットボールする。

 

▶音声ファイル(※クリックすると音が出ます)

 

<ひとくちメモ>

4行3連で

第1連と第3連は全く同一の詩句。

こういうのを

2部形式という、

と音楽の授業で習った覚えがありますが

詩の世界ではルフラン(英語ではリフレイン)といい

中原中也の得意技の一つです。

ルフランは、シンプルさを求められるがゆえに

中身の濃さが問われる技です。

一読して

残るのは第2連

もう不要になったストーブ。

ここに詩人がいます。

白っぽくさびているストーブは

ダルマストーブなのでしょうか

昔の小学校、中学校、高校などの学校や

駅舎の待合室などは

みんなダルマストーブでしたが

個人の家ではどうだったのでしょう。

石炭やコークスの

燃え盛るストーブは

太陽の赤でしたが

一度消してしまえば

白い粉を吹き出して

隅っこに死んでいました。

目をつむると

このストーブが見えます。

朝、目覚めると

曇天に風。

それも強い風です。

二日酔いで

ガンガンする頭をかかえた詩人が見るのは

たくさんの天使が

バスケットボールをしている景色です。

強い風が

詩人には

天使のバスケットボールに見えたのです。

なんとシュールな映像!

曇天に強い風は

宿酔の詩人に

心地よかったのかもしれません。

「初期詩篇」の末尾を飾る作品で、

へべれけに酔って昏睡して迎えた朝

太陽に容赦なく射られるけだるさには

まだ希望を感じさせるに十分な明るさがあります。

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