(そのうすいくちびると)
そのうすいくちびると、
そのほそい声とは
食べるによろしい。
薄荷(はっか)のように結晶してはいないけれど、
結締組織(けっていそしき)をしてはいるけれど、
食べるによろしい。
しかし、食べることは誰にも出来るけれど、
食べだしてからは六ヶ敷(むつかし)い。
味わうことは六ヶ敷い、……
黎明(あけぼの)は心を飛翔(ひしょう)させ、
美食をすべてキナくさく思わせ、
人の愛さえ五月蝿(うるさ)く思わせ、――
それでもそのうすいくちびるとそのほそい声とは、
食べるによろしい。――ああ、よろしい!
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